全国知事会の「地方の社会資本整備プロジェクトチーム」(座長・広瀬勝貞大分県知事)は、地域主権の実現に向けた社会資本整備の必要性を訴える提言をまとめた。将来の展望が見えない中での一律・一方的な公共事業予算の削減に対する危機感を背景に、重要な社会資本整備の方針を政府の「新成長戦略」に位置付け、国として責任を持って取り組むべきと強調。一方で、効率的・効果的な社会資本整備に向けて、新たな事業評価制度やコスト縮減の仕組みが必要と訴えている。
提言は、まず「社会資本は教育・医療と同様、地域主権の実現に向けた基礎的条件の一つ」であり、「各地域が強みを生かした成長戦略を描くためには、前提となる社会資本が必要」との認識を示した。
その上で、安全と安心が確保された生活環境の整備に向けて、国管理の幹線から地方管理の生活道路まで、ネットワークとして協調した事業の必要性を指摘。また、各地で進める個別ダムの検証の結果、「ダム建設が必要」と地域が判断した場合、国はこれを尊重すべきとした。
地域の競争条件を整える広域的な交通網の確保策として、地方幹線交通網のミッシング・リンク解消を求めるとともに、道路、空港、港湾、新幹線など総合的・体系的な広域交通網整備の推進が重要とした。
さらに国際競争力を高めるため、大規模な空港や港湾だけでなく、地域とアジアとの直接交流を促進する地方拠点施設の整備や、地域の観光資源を最大限活用するための環境整備(広域交通網、電線類地中化)を促進すべきとした。
効率的・効果的な社会資本整備を推進する観点からは、事業評価制度の見直しを求めた。具体的には、災害対策や観光客増加といった、地方が道路整備に期待する効果を積極的に評価対象とすることや、事業評価に地方の意見を反映させることが適当とした。
コスト構造改善に向けては、▽ローカルルール(1・5車線整備など)の促進▽維持修繕事業での予防保全型管理の促進▽所管省庁が異なる同種の公共施設(汚水処理施設、海岸など)の効果的・効率的な整備▽PFI、PPPの活用に向けた制度研究や道路整備などへの先行導入―が必要とした。
提供:建通新聞社