「最小不幸社会」の実現を掲げる菅新内閣の発足を受けて、国土交通行政のかじ取りを前原誠司国土交通相が再び担うことになった。前原国交相は約9カ月前の就任早々に八ツ場ダムの建設中止を宣言し、10年度予算では公共事業費を大幅に削減した。2期目に入ったいま、何を考え何を目指すのか。9日、専門紙との会見に応じ、国土交通行政の方向性などを語った。(文・構成は編集局=高橋量太)
―2011年度以降も公共事業費の削減は続くのでしょうか。
「民主党のマニフェストには、公共事業費を4年間で1兆3000億円削減すると明記した。この方針を踏まえ、10年度予算では国交省分と農水省分を合わせて公共事業費を1兆3000億円減らした。わずか1年間で目標は達成したことになる。11年度以降はこの水準を維持していくことが当然だ」
―府省板事業仕分けである国交省の行政事業レビューでは、公共事業費の削減に比例して必要性が増すはずの建設業支援策が廃止と判断されました。どうしてでしょうか。
「行政事業レビューでは、施策の効果が出ていないという理由で厳しい判断となったのだろう。本当に実績が上がっていれば、そういう評価にはならなかったはずだ。建設業者に対する支援策がいらないというわけではない。指摘を踏まえ、実効性ある施策の中身を省庁連携で詰めていくつもりだ」
―3月に入札契約制度改革の方針を打ち出しましたが、さらに取り組むべき事項はありますか。
「総合評価方式について、できる限り恣意(しい)的な判断を避ける仕組みとすることが重要。いまでも建設業界から『評価に納得できない』といった声が多数届く。評価する側とされる側の思いが一致する制度へと見直していかなければならない」
―高速道路の新たな料金制度や整備手法の方向性を教えてください。
「高速道路の一部無料化は6月下旬から実施する。新たな料金制度をめぐっては関連法案が閣議決定され、鳩山前首相との間でも国会審議を踏まえ最終的に国交省が判断することを確認している。こうした考え方に沿って行動していく」
「高速道路の整備に当たっては、継続事業を着実に進めていく。特にミッシングリンク(高速道路ネットワークの未接続部分)の解消は地方からの要望も強く、力を注いでいくつもりだ」
―国交相が景気回復の原動力と位置付ける住宅市場の活性化にはどう取り組んでいきますか。
「住宅のリフォーム、エコ化、耐震化、医住近接という4分野について、経済的にもプラスとなる方策の検討を住宅局に指示した。耐震については具体的には言えないが、何らかの税制措置も求めていきたい」
―建設産業が海外で活躍するためには、国内でもっとPPPやPFIといった手法の経験を積む必要があるのではないでしょうか。
「近年、海外の建設プロジェクトではゼネコンが大きな損失を被っている。相当な経験とリスクマネジメントの技術などがないと痛い目に遭うということだ。そういう意味からも、国内市場でPPPやPFIの経験を積むためのモデル事業が必要と考えている」
提供:建通新聞社