都道府県政令市の大半が、災害時の対応能力を備えた建設業の存続を期待していることが、建設経済研究所のアンケート調査で分かった。地域建設業の倒産・廃業による地域防災力の低下に危機感を持っている姿が浮かび上がった格好だ。建設業に期待する具体的な取り組みとしては「建設業界として連携して対応できる体制」「不意の災害発生時に、すぐに対応が始められる体制」「復旧や救助作業に必要な人材、機材、資材がすぐに確保できる体制」などを求める声が多かった。
「災害対応と建設企業の役割に関するアンケート」は都道府県47団体、政令市18団体を対象として実施し、92・3%に当たる計60団体から回答を得た。その結果を25日に発表した建設経済レポートに盛り込んだ。
それによると、災害時に建設業が出動した経験は「今年度・昨年度に経験した」が64%で最も多く、「過去5年以内に経験した」13%、「過去10年以内に経験した」5%などと続いた。災害時の体制整備の状況については複数回答で「地域の建設業と災害時の対応の協定を結んでいる」が95%、「地域防災計画や他の防災に関する計画の中で地域の建設業の役割を定めている」が25%などとなった。
災害時の対応能力を備えた建設業の存続を期待しているかどうかについては、77%が「強く期待している」と回答。「ある程度望んでいる」の11・5%を合わせると、その大半が建設業の役割に期待を寄せていた。
一方で災害対応力のある企業の認知度を尋ねたところ、「どの建設業が頼りになるか土木・建築部局も防災管理部局もよく知っている」と答えたのは22%にとどまり、「土木・建築部局は知っているが防災危機管理部局は知らない」が62%、「防災管理部局は知っているが土木・建築部局は知らない」が3%、「土木・建築部局も防災危機管理部局も知らない」が13%と部局間で情報把握に差があることが分かった。
建設業の災害対応力を高めるための方策としては複数回答で「建設企業や業界団体と協定を結び、協定を履行する体制確保を求めていく」が最多の88・3%、次いで「災害対応ができる企業に対して、公共工事の入札契約で評価する」76・7%、「災害対応ができる企業を地域社会に対し公表する」33・3%などが続いた。
公共工事の入札契約で評価している事例を見ると、経営事項審査の発注者別評価点で加算対象としているケースや、総合評価方式で評価対象にしているケースが目立った。さらに関東地方整備局の「建設会社の事業継続力認定制度」のように、災害時の基礎的な事業継続力を備えている建設会社をあらかじめ認定する取り組みも始まっている。
提供:建通新聞社