国土交通省成長戦略会議(座長・長谷川閑史武田薬品工業社長)は17日、国土交通分野の競争力を高め日本経済の成長を促すための政策提言「国土交通省成長戦略」をまとめた。この中で、ばらまき行政・再配分政策から脱却し、限られた公共投資を費用対効果に応じて集中的に配分することや、民間の知恵と資金が積極的に活用される仕組みを導入することを基本原則に位置付けた。その上で、成長戦略分野についてそれぞれの戦略目標や優先すべき政策を打ち出した。
国土交通省成長戦略は、人口減少や少子高齢化、莫大(ばくだい)な長期債務といった日本を取り巻く厳しい局面を打開する上で、国際競争力を向上させるための成長戦略が不可欠との観点から、前原誠司国交相が策定を打ち出した。2009年10月に設置された国交省成長戦略会議では、計13回にわたる議論を経て最終報告をまとめた。
17日に長谷川座長から最終報告を受け取った前原国交相は「他国に後れを取っている分野もあるが、このまま手をこまぬいているのではなく、少しでも努力して日本の尊厳や誇りを取り戻すことが重要だ」と成長戦略の意義を強調。その上で「戦略会議メンバーの尽力や国民の期待に応えるために、この戦略をやり抜いていく」との意気込みを示した。
今回の最終報告と4月28日に示した中間報告との違いは、@住宅・都市A国際展開・官民連携B航空C海洋D観光―という五つの成長戦略分野について、特に優先して実施すべき事項を明確化した点だ。
住宅・都市分野では、▽大都市圏戦略の策定や、都市再生特別措置法の前倒しての延長・拡充などによる大都市の国際競争力強化▽高齢者賃貸住宅の法律上明確な位置付けや、UR団地などへの医療・福祉施設の導入などによる高齢者居住環境の確保▽将来的に新築住宅・建築物を100%省エネ化することなどを見据えた環境に優しい住宅・建築物の整備―に取り組む。
国際展開・官民連携分野では、▽日本企業の国際展開や国内のPPP/PFI事業を資金面で補完する官民連携の大規模インフラファンドの組成▽民間事業者にインフラの事業運営や開発に関する権利を長期間にわたり付与するコンセッション方式によるPPP/PFIの実行▽省庁横断的な国際展開支援組織の創成―に力を注ぐ。
航空分野では、首都圏空港の充実を含む徹底的なオープンスカイ化や、バランスシート改善による関西国際空港の積極的な強化を推進。海洋分野では、選択と集中による港湾機能の抜本的な改善や外交海運の国際競争力強化を進めていく。観光分野では、訪日外国人3000万人プログラムの達成や、創意工夫を生かした観光地づくりのための人材育成に取り組む。
提供:建通新聞社