経済産業省は、中心市街地のシャッター化や空洞化問題の解決に向け、まちづくり会社などによる不動産の「所有と利用の分離」手法を用いた、中心商店街活性化の効果的な進め方について分析した報告書をまとめた。まちづくり会社を安定的に経営するためには、事業計画段階での適正な事業規模の見極めが重要と提案。また、エリアの将来像となる「エリアビジョン」を作成し、関係者間で共有することも大切だとしている。
まちづくり会社は、商店や自治体など地域の関係者で構成。空き店舗の利用権を所有者から定期借地や信託の形で取得し、中心商店街区域の再生を目指す。
今回の報告書は、2009年度「まちづくり会社支援事業」に採択された15地区のまちづくり会社や同設立準備組織の取り組みを参考に、まちづくり会社が行う事業を効果的に進めるためのポイントを整理した。
まちづくり会社支援事業は、中心商店街の再生に取り組むまちづくり会社に対して国が各分野の専門家を派遣し、地域に適した取り組みを提案するもの。
このうち、栃木県宇都宮市のまちづくり会社「うつのみやまちづくり推進機構」は、商店街の一角に宇都宮の餃子、佐野のラーメンなどのフードコートと地域の特産品販売店が集積する「餃子スタジアム」(仮称)の整備を構想。専門家を交えて事業計画をミュレーションした。その結果、不動産開発事業はリスクが大きく、資金調達にも時間がかかることなどから、リスクが低い空き店舗活用事業などから取り組み、徐々に具体化していくことにした。
こうした事例を踏まえ報告書では、実際の施設整備に当たっては「適正な規模・業種の導入を前提とした事業計画、施設計画の作成がポイントになる」と述べている。
そのためには、詳細なマーケット調査による適正規模などの把握や、期待できる賃料収入をシミュレーションによって明らかにすべきだとしている。事業計画が十分に精査されていないと、テナントの入居が進まず、事業が頓挫するケースも多いという。
また、中心市街地で複数の不動産開発事業が構想されている場合、それらの関係者で構成する協議会などの中立的機関を組織し、事業間の相乗効果を高める工夫も必要だとした。その中で、事業手法や活用する補助金、事業主体、通り道などの空間の位置付けなどを示したエリアビジョンを作成し、関係者間でイメージを共有することが重要だと述べている。
提供:建通新聞社