国土交通省の「建築基準法の見直しに関する検討会」(座長・深尾精一首都大学東京教授)は8日に初会合を開き、構造計算適合性判定(適判)の対象範囲や建築確認検査期間などの在り方について検討に着手した。意見交換の中で、建築関係や産業関係の委員は「建築確認手続きの簡素化や迅速化に向けた法改正が必要」との方向でおおむね一致したものの、欠陥住宅問題を扱う弁護士からは「規制緩和は慎重に議論すべき」といった見解が示された。次回以降、委員の意見発表やテーマごとの意見交換を6月下旬まで重ねた上で、夏をめどに開く最終会合で検討成果をまとめる。
今回の検討会は、前原誠司国交相が担当部局に指示した「建築確認手続きの簡素化・迅速化と違反行為への厳罰化を見据えた建築基準法見直しの検討」を具体化するもの。開会に先立ち、馬淵澄夫副大臣が「政権交代以来、建築基準法見直しが国民の声として数多く寄せられた。本年1月に基本方針を発表した運用改善策に加え、適判対象範囲や法定期間、厳罰化の在り方などをしっかりと議論してほしい」とあいさつした。
意見交換の中で、日本建築士事務所協会連合会会長の三栖邦博委員は「前回の法改正は設計者を信頼しないというところから出発した。チェックを二重、三重にしたことで責任があいまいになった面もあるのではないか。今回の見直しでは設計者が責任を持てる枠組みが必要だ」と強調した。
また、日本建築構造技術者協会会長の木原碩美委員は建築確認検査の厳格化について「設計図書の内容はその前後で様変わりした」と評価しつつ、「適判機関による審査と構造設計一級建築士の関与は重複している部分が多く、適判の在り方は審議すべき」との認識を示した。
さらにパナソニック本社施設管財グループ立地・建設チームリーダーの橋爪啓文委員は、「メーカーにとって、製品を市場にどんなタイミングで出せるかが重要であり、工場建設に必要な手続き期間の短縮を求めたい。さらに既存不適格となっている工場が有効活用できないと、海外に展開せざるを得なくなる」と指摘した。
一方で、弁護士の谷合周三委員は「欠陥住宅の被害は悲惨。この被害を防ぐために建築基準法の役割は極めて重要だ。建築確認検査を緩めるなら慎重に議論してほしい。加えて、中間検査を強化し、施工段階でもチェックする仕組みが求められる」などと訴えた。
次回4月1日の会合では設計関係の委員、4月15日の会合では施工・生産関係、消費者・保険関係の委員、4月26日の会合ではユーザー関係、審査関係の委員がそれぞれ意見を発表する予定だ。
提供:建通新聞社