国土交通省は、下請けの建設会社や資材会社の連鎖倒産防止を目的とする「下請債権保全支援事業」の制度設計を固めた。下請けなどが持つ売掛債権の支払いをファクタリング(債権買取)会社が保証する際に、国が保証料の一部を助成するとともに、元請けが倒産した場合でも下請代金などの債権を保全する仕組みを想定しており、二次以下の下請けも活用できるようにする。実施主体となる建設業振興基金に事業の適正な実施を9日付で通知。都道府県政令市や建設業団体にも制度の趣旨を周知した。2月中にファクタリング会社を決め、3月1日から運用を始める。
この事業は、2009年7月にスタートした「下請資金繰り支援事業」の枠組みを活用する。下請けの建設会社や資材会社が元請けに対して持つ売掛債権について、ファクタリング会社が支払いを保証する際、下請けなどが支払う保証料の3分の2(上限は年率4%)を負担。また、ファクタリング会社のリスクを軽減するため、元請けの倒産時に生じる損失の95%を補償する。
新しい事業と下請資金繰り支援事業との違いは、▽手形以外の幅広い債権をカバーできる▽2次以下の下請けも対象となる―などの点だ。
手形以外の債権については、元請けに請求書を出した時点から保証の対象となる。ただし、請求後、元請けが支払額を認めるまでは請求額の8割を保証額の上限とする。また保証対象は契約の注文者(2次下請けの場合は1次下請け)に限られ、さらに注文者は当該年度か前年度に公共工事の受注実績があることが要件となる。手形を早期に現金化できる仕組みは取り入れられていない。
保証限度額などは緩和する方向で見直す。下請け1社当たりの保証限度額は完工高に応じて3億円または6億円(従来は1億円、3億円、5億円)を上限に設定。下限額も保証1回当たり100万円(従来は500万円)を下回らない範囲でファクタリング会社が設定することにした。
下請債権保全支援事業の創設に合わせて下請資金繰り支援事業の制度設計も同様の趣旨で見直し、2月下旬から新たな基準での運用を始める考えだ。
第2次補正予算には事業費として47億円を計上した。内訳は保証料負担助成費用が約1億円、リスク軽減費用が約46億円。国会審議中の10年度予算案には8億円を盛り込んだ。事業期間は11年3月31日までを見込んでいる。
提供:建通新聞社<