2010/01/19
「河川の氾らんを前提にした政策への転換」 国交省の有識者会議で論点に
国土交通省の「今後の治水対策のあり方に関する有識者会議」(座長・中川博次京都大学名誉教授)は15日の会合で、委員から寄せられた意見を主な論点としてまとめた。治水対策案の在り方をめぐっては河川の氾らんを前提とした政策への転換を求める意見があった。また治水対策案の評価手法として、従来の費用便益分析(B/Cなど)に加え、生態系保全など貨幣価値での費用便益論になじまない観点を含め、総合的に評価すべきとの声が上がった。
会合では、委員から事前に寄せられた意見を論点として集約し、それを基に意見を交換した。今後の治水理念の在り方としては、これまでの「高度成長継続型」から、「持続的発展適応型」の流域治水に軸足を移すべきとの意見があった。また、計画を超える洪水が発生する可能性があるとの前提で氾らんを許容する政策への転換を検討し、その対応策として耐越水堤防の工法や実施個所の選定、地域ごとに確保すべき洪水位の決定などに取り組むべきとの提案があった。
都市域では、いわゆるゲリラ豪雨による被害やヒートアイランド現象を抑制するため、都市の熱放出量の抑制や雨水貯留・浸透施設設置の義務化などの施策を強力に実行すべきとの声も見られた。
ダム事業をめぐっては、用地補償基準妥結の時期に代替案に関する経済評価や利水者・地域住民の動向資料を評価委員会に提出して評価を受け、建設継続か中止を判断するよう求める意見があった。
有識者会議ではこうした論点をさらに深めていくため、▽河川を中心とした対策▽流域を中心とした対策▽評価軸や検証の進め方―という3テーマについて、小委員会を設け検討作業を進め、今夏をめどに中間報告をまとめる考えだ。