中小企業向け融資などの返済を猶予する「中小企業金融円滑化法」施行の効果を実感している企業の割合が1割未満にとどまっているという調査結果を、帝国データバンクがまとめた。法施行後、金融機関に対する返済計画見直し(リスケ)の申請環境が「良くなった」と回答した企業は7・7%で、「悪くなった」という回答と同水準だった。取引先がリスケ申請した場合、8割の企業が「資金繰りが逼迫(ひっぱく)している」と受け止め、4割が取引先の与信管理を引き締める考えでいることも分かった。
「中小企業金融円滑化法」は、金融機関に対し中小企業向け融資や住宅ローンの返済猶予について努力義務を課すもの。09年度の臨時国会で成立し、同年12月4日に施行となった。同法施行の影響を探るため、帝国データバンクは09年12月から10年1月にかけて全国2万1632社を対象にアンケート調査を実施し、1万0359社から回答を得た。
それによると、リスケ申請の環境が「良くなった」と回答した企業からは「借入返済が重荷になっていたところ、法成立により金融機関にお願いしやすくなった」「堂々とリスケの話し合いができるようになった」などの声が挙がった。一方、「悪くなった」と回答した企業は「猶予を申請すれば、その後の融資はストップする」「リスケを履行したからといって企業の業績回復にはつながらない」といった指摘があったという。
仮に自社の取引先に金融機関からリスケ申請が了承された企業があった場合の与信管理姿勢の変化を尋ねたところ、「与信を引き締める(与信枠、取引限度額を縮小する)」という回答が40・3%で最も多かった。
与信を引き締める理由については複数回答で82・5%の企業が「リスケ申請した時点で資金繰りはひっ迫していると考えるため」と回答。「猶予の効果は一時的と考えるため」が50・2%で続いた。
提供: 建通新聞社