国土交通省は受発注者間の片務性解消に向けた取り組みの一環として、総価の内訳を受発注者が協議・合意する「総価契約単価合意方式」の適用対象を、直轄事業の全土木工事などに拡大する方向で調整を進めている。同方式に基づき細別ごとの単価を事前に合意しておくことで設計変更を円滑化させ、生産性の向上を図ることが狙い。新たな施工体制が必要となる追加工事では、官積算に当初の落札率を乗じる従来の算定手法を見直すことも可能となり、受注者の適正な利益確保にもつながる可能性がある。
設計変更によって請負代金に変更が生じた場合、これまでは官積算が優先されがちで受発注者間の協議が進まない要因の一つとなっていた。同方式によりあらかじめ合意していた単価を用いれば、互いに納得しやすい変更額の算出が可能となり、設計変更の円滑化につながる。また、同方式の活用により出来形に応じて請負金額を部分払いする「出来高部分払方式」を選択しやすい環境が整い、結果として受注者のキャッシュフローの改善にも役立つ。
こうした観点から国交省は、これまでユニットプライス型積算方式の適用案件など一部に限定していた総価契約単価合意方式を拡大する方針を3日に開いた「直轄事業の建設生産システムにおける公共事業の品質確保の促進に関する懇談会」生産性向上部会に示した。現在、関係機関との調整を進めているところで、運用開始時期については未定としている。
運用に当たっては、単価などを個別に合意する方式(単価個別合意方式)を基本とする。ただし工事事務所発注の工事については、請負者の希望により、当初契約時の予定価格に対する落札価格の比率を乗じ、単価などを包括的に合意する方式(単価包括合意方式)も認める。
単価合意は積算体系の細別ごとに行う。例えば、道路土工と擁壁工で構成する道路改良の場合、▽盛土(流用土)▽盛土(購入土)▽法面整形(盛土部)▽コンクリート▽鉄筋▽型枠―といったレベルで受発注者が単価を協議・合意する。
同方式の全面導入を前提として、これまで官積算に落札率を乗じて導いていた追加工事費用の算出方法も見直したい考え。施工体制の変更が必要な工種が追加された場合には、あらかじめ合意していた単価をそのまま用いたり、一定の係数を乗じる手法を想定している。
提供:建通新聞社