本年5月27日に運用が始まった改正建築士法に基づく構造設計一級建築士制度と設備設計一級建築士制度は、半年間の経過措置期間が終わり、11月27日にいよいよ完全施行を迎える。国土交通省は建築確認の現場に混乱を招いた改正建築基準法施行時の二の舞を避けようと、約12万事務所に達する建築士事務所すべてに制度の趣旨やポイントを説明するダイレクトメールを今週中にも送付する。また、建築関係団体は実務者向けの運用マニュアルを策定しており、官民連携で円滑な施行に向けた取り組みを強めている。
この制度は一定の規模や構造を持つ建築物の構造・設備設計について、改正建築士法に基づく構造/設備設計一級建築士の関与(法適合を確認した上で確認申請図書への記名・押印)を義務付ける仕組み。経過措置として、5月26日までに設計済みのものについては、11月26日までに確認申請すれば関与を不要としている。
これまで国交省は同制度の円滑な施行に向けて、資格者の増員や地域偏在への対応などに力を注いできた。こうした取り組みもあり、現段階で構造設計一級建築士(修了者)は8263人、設備設計一級建築士(同)は3702人を確保。構造設計事務所や設備設計事務所に対する資格者確保見込みのアンケート調査でも、未確保の事務所数はごく一部となっている。
ただし、11月27日以降は構造分野で年間約2万件、設備分野で年間約2000件とみられる対象建築物について、構造/設備設計一級建築士の関与がなければ確認申請が受理されなくなることから、国交省はさらに周知徹底が必要と判断し、すべての建築士事務所にダイレクトメールを発送することを決めた。
同制度の円滑な施行に向けた取り組みは、民間レベルでも進んでいる。建築関係団体で構成する新・建築士制度普及協会は、構造/設備設計一級建築士の関与が義務付けられる建築物の考え方や記名・押印の方法などを具体的に分かりやすく解説するマニュアル「法適合確認運用解説版」を策定。法適合確認などに関するQ&Aも豊富に盛り込み、ホームページ(http://www.icas.or.jp/index.php)で公開している。
提供:建通新聞社