トップページお知らせ >中央ニュース

お知らせ

中央ニュース

2009/06/15

民間建築物280万棟にアスベスト使用の可能性、国交省が対策の検討を加速、建築基準法とは別の枠組みも視野

 アスベストが使用されている可能性が高く、調査する必要のある民間建築物が全国で約280万棟あることが、国土交通省が社会資本整備審議会建築分科会アスベスト対策部会(部会長、村上周三独立行政法人建築研究所理事長)に示した推計で分かった。建築物などの解体のピークが2028年(平成40年)前後に訪れ、解体棟数が09年現在の約2倍に増えるとみられることから、同省では、社会資本整備審議会建築分科会アスベスト部会(部会長・村上周三独立行政法人建築研究所理事長)などの意見を踏まえ、「建築基準法とは別の枠組み」(住宅局・小川富由官房審議官)も視野に入れた対応策の検討を加速する。
 国交省が示した推計は、「住宅土地統計調査」や「減価償却資産の耐用年数等に関する省令」などを基に、国内で吹付けアスベストが使用されるようになったとされる1956(昭和31)年から、労働安全衛生法施行規則が改正されて0・1%を超えるアスベスト含有吹付けロックウールの使用が禁止された2006(平成18)年までの間に建てられた棟数を算出。アスベストがほとんど使用されていない戸建て住宅や木造建築物は除いた。
 また、280万棟と推計される調査対象のうち、床面積が1000平方bに満たない建物が約235万棟あることも分かった。
 これまで行ってきた民間建築物の調査は、1989年(平成元年)以前に建てられた床面積1000平方b以上の建物約27万棟だけを対象に、所有者が自主点検したもの。その多くは吹付けアスベストなどが使用されている部位や劣化状況などを把握できておらず、1000平方b未満の建物のアスベスト使用実態についてもまったく分かっていないのが実情だ。
 6月12日に開かれた同部会では、同部会のワーキンググループ(WG)の調査・検討状況を報告。建築基準法による既存不適格建築としてのアスベスト対策だけでは不十分との認識で一致。
 これまでに実施されてきたアスベスト対策のための法制度の整備・改正の時期や、建物の使用目的・状況などに応じて使用実態調査を行う優先順位を決め、アスベスト台帳(データベース)を整備した上で、適切に管理・除去を進めていく必要があるとの認識でもおおむね一致した。
 これを受けて、久保哲夫委員(東京大学教授)が「(民間建築物の中にアスベストが)ある、なしを優先順位を決めて調査し、台帳に記録する必要がある。災害発生時を想定して表示の義務化も考えるべきではないか」と発言。
 また、全国建設労働組合総連合(全建総連)の澤田雅紀工務店対策部長は「中小規模の建築物の対策も必要だが、所有者が対策費用を負担できるのか」と述べ、今後の検討課題として「調査・除去に従事する人たちがばく露しない、安全への配慮」を加えるよう求めた。
 村上周三部会長はこうした委員の意見を総括。「建物のオーナー(所有者)が調査・除去すれば得だと思える、インセンティブのある仕組みづくりを考えていく必要がある」と述べ、WGでの調査研究・検討を促進するよう求めた。
 国交省住宅局の小川富由官房審議官はこの日の検討を受け、「(他部局との)オーバーラップがあって初めて問題が解決に近付く。建築基準法とは別の枠も視野に入れながら、建物だけでなく、ほかの知見も集積していきたい」との考えを示した。
提供:建通新聞社