国土交通省は、発注者と設計者、施工者で営繕工事を円滑に進めるため、主に発注者が実施すべき取り組みを示す「事例解説」をまとめた。建設業団体から寄せられた改善要望に対応するため、特に、設計条件の明示や適切な設計図書の作成、設計意図伝達など設計に関する課題について手厚く記載。各地方整備局に通知するとともに、他の営繕工事発注者にも参考にしてもらう。
営繕工事では、設計者による施工者への設計意図伝達や、施工段階での条件に応じた納まり調整など、発注者や設計者、施工者、工事監理者など幅広い関係者による調整が必要になる。調整に手間取ると工程の遅延や手戻りの発生につながりかねず、営繕工事では2023年度に調整円滑化に向けた発注者の実施事項を「事業円滑化通知」としてまとめた。
昨年4月から建設業にも時間外労働の罰則付き上限規制が適用されたことを受け、国交省は営繕工事のさらなる生産性向上を検討。建設業団体から過去3年間にわたって提供された情報を基に、設計と現地の不整合や事前協議の不足といった課題となる62事例を八つの代表例に分類した。
その上で、各事例に対応して事業円滑化通知に盛り込んだ留意事項を示すとともに、具体的な改善のための取り組み例をまとめた。主な内容を見ると、設計段階では設計条件の明示や図面の整合性の担保、施工条件や指定仮設の確認を挙げた。施工段階では、契約から着工までの余裕期間の設定や、遅滞ない設計意図の伝達、BIMなどを活用した納まり調整の円滑化、遠隔臨場・情報共有システムの活用などに取り組む。
具体的には、設計段階で下水道部局との排水計画事前協議が行われず雨水排水計画図が大幅に変更になった事例に対し、電気・ガス・上下水道などのインフラに関して法令や条例に基づく協議を要する事項を事業進ちょくに応じて整理する。
設計段階での発注者からの指示事項が設計図書に反映されておらず、施工段階で多数の変更が発生した事例を受け、発注者の要望に対する設計者の対応状況を整理・可視化する必要性も指摘した。
施工段階では、口頭による変更など、あいまいな発注者の指示について、適切に工期・代金を変更するとともに、必要な予算措置を行うよう記載。変更時は資機材の調達時期や工場での製作期間など、工事全体への影響を考慮する。
提供:建通新聞社