国土交通省は、下請け建設業が取引先に対して持っている工事請負代金などの債権を金融機関が保証する下請債権保全支援事業の実施期間を1年間延長し、2026年3月31日までに支払い保証を開始したか、または買い取られた債権を対象とすることにした。人手不足や資機材価格の高騰を背景として、倒産する中小零細の建設業が増えていることを受け、改めて制度を周知している。
下請債権保全支援事業は、中堅・中小の下請け建設業者や資材業者の資金繰り改善を目的とした制度。取引先の企業の財務状況に不安があるとき、ファクタリング会社を介して債権の保証を受けたり、当座の資金が必要なときに債権をファクタリング会社に買ってもらったりすることができる。
対象は現金化までの期間が120日を超えない手形。60日超の手形は昨年11月以降、建設業法違反の恐れがあるが、手形を受け取る側を保護する観点から、従来通り120日まで債権保全の対象として認めている。
利用に当たっては、ファクタリング会社の保証を受ける際の保証料や、債権を譲渡する際の買取手数料の一部の助成を受け取ることもできる。保証料率の33%、年率1・5%が上限となっている。
保証実績は年間約1500件程度。コロナ禍の経済対策として政府が無利子無担保融資を実施したこともあって、近年は利用が減っていた。
一方、足下では資機材価格の高騰や、人手不足などにより資金余力を失ったことによる建設業の倒産件数が増加。帝国データバンクによると、24年の倒産件数は1890件となり、10年ぶりに1800件を超えた。特に、職別工事業の増加が顕著になっている。25年も状況は変わらず、倒産が緩やかに増加する局面が続く見通しだ。
国交省は、下請債権保全事業の仕組みを改めて周知し、事業を継続できるのに倒産するような事態の防止につなげる。
元請け向けにも、工事請負代金債権の譲渡により、工事の出来高に応じた融資を受けられる出来高融資制度を提供している。こうした制度の活用も促していく。
提供:建通新聞社