厚生労働省と出入国管理庁は2月6日、技能実習に代わる新たな外国人材の受け入れ制度である育成就労の具体化に向けた省令案を議論する有識者懇談会を開いた。人材流出の懸念に対応するため、優良な企業に限って受け入れの人数枠を都市部よりも拡大することや、育成就労期間の3分の1以上を業務区分ごとの「必須業務」に従事させるといった方向性を示した。
育成就労制度は2027年までに施行する。特定技能の入り口としての位置付けを明確化し、一貫したキャリアルートを描けるようにする。外国人本人の意向で受け入れ先を変える転籍も認める。
懇談会では、育成就労計画の認定基準についての主な論点をまとめた。機関ごとの受け入れ人数については、技能実習制度を参考に基本人数枠を設定し、受け入れ機関が優良な場合に人数枠を2倍に拡大。大都市への人材流出の懸念を解消するため、地方部に限っては受け入れ機関と監理支援機関の双方が優良な場合に基本人数枠の3倍まで認めるとの方向性を示した。
外国人が従事できる業務の範囲は、現行よりも幅広くする。建設分野の場合、技能実習では22職種33作業が設定されているが、特定技能の業務区分(建築、土木、ライフライン)にそろえる方向を想定。これに伴って技能実習で定めている関連業務、周辺業務の区分を撤廃し、「必須業務」については育成就労期間の3分の1以上従事するよう求める。
技能実習では原則として想定していない時間外労働については、適正な技能修得を前提に認めるなど、柔軟化することを検討。
育成就労では、就労開始までに日本語能力A1相当の試験に合格していない場合、一定の講習が求められる。懇談会では、育成就労実施者に費用負担を求め、最低100時間以上のA1相当講習を実施する案を示した。合わせて、A2相当の日本語能力試験への合格を見据え、3年間に育成就労期間を通じて100時間以上の講習機会の提供を求める。
委員からは、日本語教育機関・講師が国内だけでなくアジア全域で不足しているとし、オンライン講習の環境確保策、カリキュラム整備を求める意見が出た。
転籍した外国人の受け入れ先にも要件を設ける方向だ。試験合格率や育成体制、法令順守の状況が一定の基準を満たす、優良な期間に限るとの論点を示した。転籍者を受け入れる割合は、在籍する育成就労外国人の3分の1以下とすることを検討。地方からの転籍者を都市部の企業が受け入れる場合は6分の1以下とし、人材流出に配慮する方向だ。
転籍に伴って受け入れ機関が在籍していた企業に支払うべき初期費用は、職業紹介費や講習費、来日渡航費、育成費を想定。一律の標準額を設け、在籍期間に応じて支払う。
■特定技能1号は最長1年延長
特定技能の見直し、育成就労の施行に向けた基本方針に関する有識者会議も同日に開いた。転籍の制限期間は1〜2年間で、受け入れ分野ごとに定める。
特定技能1号の資格で在留できる期間は通算5年間が原則だが、2号への移行の試験に不合格になった場合に最長1年の継続を認める。通算期間からは妊娠・出産期間を除外する。
在留期間に更新上限のない特定技能2号については、B1相当以上の日本語能力を求め、産業分野ごとに水準を定める。施行後に一定期間が経過してから合格を求める方針。
提供:建通新聞社