国土交通省は、建設リサイクル分野で早期に取り組むべき施策として、建設発生土の利用促進に向けたマッチング強化と、再生骨材コンクリートの利用拡大を位置付けた。1月29日に開いた社会資本整備審議会・交通政策審議会の建設リサイクル推進施策検討小委員会で打ち出した。今春にも小委員会がまとめる中間報告に盛り込み、早期の具体化を目指す。
CO2排出量を実質ゼロにするカーボンニュートラルの実現に向けた取り組みの一環。建設発生土・副産物の総量削減や再資源化率の引き上げだけでなく、CO2削減への貢献などリサイクルの「質」の向上を目指す。
建設発生土については、公共工事・民間工事を問わず相互に有効利用できるよう、マッチング機能を強化する。
現在は、公共工事間の相互利用に限定している「建設発生土情報交換システム」と、官民の相互利用に用いる「建設発生土の官民有効利用マッチングシステム」を日本建設情報総合センターがそれぞれ運営。これらを「コブリス・プラス」として一体化し、機能を強化して5月に運用を開始する。
関係団体からは、情報交換システムの利用だけでなく、専属の担当者を配置して現場レベルで土質や土工期といった条件を確認することが必要だとの声が上がっている。工程上の条件が合わないと工事間利用が難しいことから、ストックヤードを活用した搬入・搬出タイミングの調整や、土質改良プラントの活用が必要といった指摘も出ている。
このため、情報交換システムの強化に加え、ストックヤード運営事業者登録制度の運用状況を踏まえ、ストックヤードを活用した工事間のマッチング強化を検討する方針だ。
小委員会では、先進事例として神奈川県が県・市区町村の公共工事で排出された建設発生土を地区単位で計画的に配分する取り組みを紹介。配分しきれない土砂は県が中心となって県内工事全体で調整しているという。
■再生骨材コンクリートの利用拡大
コンクリート塊の再生利用先の拡充にも取り組む。現行では、利用先は道路の路盤材などに用いる再生クラッシャランが中心で、全体の約94%を占めている。一方、大規模再開発に伴って建築由来のコンクリート塊が大量に発生する首都圏では、再生砕石が供給過多となっており、在庫が余っている状態だ。
そこで、コンクリート塊を破砕処理して再生骨材とし、コンクリート構造物に再利用する用途を拡大する。再生骨材は品質によって三つに区分されており、このうち重力式擁壁などの無筋構造物にも利用できる「再生骨材M」に力点を置き、まずは公共工事で先導的に利用を拡大する。
ただ、再生骨材を用いた生コンを利用する際は、再生骨材コンクリートのJIS表示認定を受けた工場を選ぶのが原則とされている。再生骨材コンクリートの工場は全国に20社しかなく、立地が集中している東京都内も5社6工場にとどまる。生コンは運搬にかけられる時間が90分までのため、供給可能な現場は制約される。公共工事での利用拡大を、JIS工場の増加の契機とする狙いがある。
「再生骨材M」の乾燥収縮抑制対策も検討する。乾燥収縮量を通常のコンクリートに近づけることで、用途をさらに拡大する。
小委員会では、東京都が再生骨材の民間工事での利用拡大や、近隣県との需給調整に取り組んでいることを説明した。
提供:建通新聞社