国土交通省は、建設業界の重層下請け構造に関する実態調査を行う。下請け次数が多くなることで施工の非効率や技能者の処遇へのしわ寄せといった課題が生じていないか、アンケートやヒアリングを通じて把握する。人口減少による中長期的な人手不足の深刻化に備え、持続可能な建設業の在り方を探り、今後の政策に生かす。
重層下請け構造は、多様な専門工事業者を必要とする建設工事の特性と密接に関わっている。一方で、国交省の中央建設業審議会基本問題小委員会は2023年の議論の中間報告で、過度な重層下請け構造が、下請けへの対価や技能者に支払われる労務費へのしわ寄せを引き起こすという課題を指摘。実態を踏まえた建設業許可の合理化を検討事項に挙げていた。
国交省は、改正建設業法によって発注者から元請け、下請けにまで労務費を行き渡らせる仕組みを整備しようとしており、このことが過剰な重層下請け構造の是正にもつながると想定。今回の調査を通じ、改めて実態を把握する。
具体的には、国交省から建設業団体を通じて元請けに協力を依頼し、抽出した現場の体系図を提出してもらう。合わせてヒアリング・アンケート調査を実施し、工種ごとに平均的な請負次数や各許可業種の業務実態、次数に応じた下請け業者の役割分担などを調べる。重層下請け構造が、技能者の賃金や労働時間といった労働環境にどのように影響しているかも調査する。結果は2025年度末にまとめる。
09年度に行った重層下請け構造の発生要因に関する調査では、直接雇用が難しく下請けとして独立させるような例や、閑散期に備えて必要な労働者数のみ雇用するといった例があった。
近年は技能者の有効求人倍率が5倍を超えるなど人手不足は深刻な状況にある。帝国データバンクの23年度の調査では、人手不足を理由とした建設業の倒産件数が前年度と比べて倍増した。一部の専門工事業者では技能者の直接雇用拡大に踏みきったり、賃上げに取り組む例も見られる中、持続可能な建設業の請負関係の在り方を考える参考資料として今回の調査結果を活用する。
地方自治体の発注工事や、大手ゼネコンが受注するような民間工事では、次数制限を設ける例も見られる。こうした工事で施工品質や、技能者の処遇にどのような影響が出るかも把握したい考え。
提供:建通新聞社