国土交通省は、「技能者を大切にする企業」の自主宣言制度を整備する。発注者、元請け、下請けの各企業が宣言できる制度とし、建設工事のサプライチェーン全体で技能者の労務費を確保する動きを後押しする。労務費を内訳明示した見積もりをはじめ、改正建設業法を踏まえた取り組みを評価対象とする。宣言企業に対するインセンティブも設ける。
改正建設業法では、労務費の基準を著しく下回るような見積もりや見積もり依頼が禁止されるとともに、労務費を内訳明示した見積もりが建設業者の努力義務とされる。ただ、建設業界からは、改正法を順守して適正な労務費を確保した見積もりを提出した企業が、安値受注を狙う企業との競争で不利になる恐れを指摘する声が上がっている。
自主宣言制度には、技能者の処遇改善に積極的に取り組む企業を可視化し、こうした企業が受注機会を確保できるようにする狙いがある。技能者に賃金を直接支払う下請け企業だけでなく、上位下請けや元請け、発注者も宣言制度の対象とすることで、建設工事のサプライチェーン全体で技能者賃金の原資となる労務費を適正に確保する機運を高める。
自主宣言制度では、発注者や元請け、下請けが改正法に定められた労務費確保に取り組むことを宣言する。具体的には、元請け・下請けの建設業者は労務費、材料費など必要経費を内訳明示した見積書を作成する。発注者や元請け、上位下請けは受け取った見積書の内容を考慮・尊重する。技能者に賃金を支払う下請け業者は、労働者の能力を公正に評価し、その結果に基づいて適正な賃金を支払うことを宣言する。
今後、ロゴマークを定め、宣言企業が使用できるようにする。宣言企業の一覧をホームページで公表することも想定。宣言企業に対しては、表彰実績などを公共調達で加点するインセンティブを設けることを検討している。
2024年に決定した、「建設キャリアアップシステム(CCUS)の利用拡大に向けた3か年計画」では、CCUSとも連携し、技能者の能力に応じて適正な賃金支払いを行う企業の自主宣言制度とする方向性を示していた。
提供:建通新聞社