国土交通省は、適正な労務費確保を規定する改正建設業法に照らして違反とみられる取引に対し、建設Gメンが検証する際の方針をまとめた。改正法に基づき労務費を内訳明示した見積書を当初と最終で見比べ、金額と積算根拠を確認。最終見積もりまでの間に原因の不明な減額があったとき、受発注者の双方にヒアリングを行うとした。
改正法では、労務費の基準を新たに規定するとともに、これを著しく下回るような受注者の見積もりと、発注者の見積もり依頼を禁止する。建設業者には労務費や法定福利費などを内訳明示した材料費等記載見積書の作成を努力義務化。建設Gメンが見積書を調査することで、労務費が着実に支払われるよう実効性を担保する。
建設Gメンの調査では取引の経過を踏まえる必要があることから、受注者による当初見積書と、交渉を経て契約に反映する最終見積書を比較する。労務費の額だけでなく、施工数量や人工数、適用した労務単価についても調査し、積算根拠を確認する。
検証のポイントは、受注者が当初見積もりの段階で基準を著しく下回るような労務費を見積もっていないか、発注者が最終見積書の提出までに労務費が著しく低くなるような変更依頼をしていないか―の2点。
実際に基準を下回る労務費で見積もっていたときは、生産性向上などの歩掛り減少によるのか、労務費を引き下げたことによるのかを検証する。原因や妥当性を調べ、法違反として受注者への指導・監督や、発注者の公表・勧告を要するか否かを判断する。
労務費の基準は職種別に整備する。専門工事業団体が参加する意見交換会で今後、詳細を詰める。著しく低い労務費による見積もりや見積もり依頼を禁止する規定は12月中旬までに施行する。
こうした規定の施行をにらみ、建設Gメンは24年度から既に労務費の確保状況に関する調査を進めている。当初・最終見積書の確認や公共工事設計労務単価との比較を実施。施行後に法違反の恐れがある場合は改善を促している。
ただ、現在は労務費を内訳明示している見積書が少なく、確認に時間を要しているという。機動的に調査を実施できるよう、改正法の施行に合わせて材料費等記載見積書の作成・提出を広く呼び掛けることや、見積書に積算根拠を明示すること、当初・最終見積書の保存を受発注者に求めることも検討する。
提供:建通新聞社