国土交通省は、改正建設業法に基づき労務費を確保した請負契約を徹底させるため、元請け業者が見積書の作成で順守すべき事項を示したガイドラインを作成する。見積書は電子媒体を基本とし、当初・最終見積書の保存についても規定。当初と最終の見積書の比較から、違法な労務費のダンピングを把握できるようにする狙いがある。
改正建設業法では、建設業者に対して材料費や労務費、法定福利費など適正な施工に必要な経費を内訳明示した見積書(材料費等記載見積書)を作成する努力義務を課している。「著しく低い労務費」による見積もり、見積もり依頼を禁止する改正法の実効性を担保する上で重要な規定となる。
国交省では、この材料費等記載見積書の具体化に当たり、元請け・下請けや上位下請け・下位下請けのように建設業者間でやりとりするものと、発注者・元請け間でやりとりするものを分けて考えることにした。取引の実態が異なるためだ。
このうち、元請けが発注者向けに作成する見積書については、多様な取引実態があることを考慮。設計の熟度に合わせて見積もりを複数回行う例や、長期にわたる工期のため契約段階で下請け企業が定まらない例もある。こうした場合でも、元請けが見積書の作成に際して順守すべき事項を、国がガイドラインの形で提示する方向だ。
具体的には、見積書は電子媒体での作成を基本とする。当初・最終見積書の保存に関する取り扱いについてもガイドラインの中で明記する方針。当初見積もりと比べて最終見積もりで労務費が大幅に削られていれば、改正法により禁止される「著しく低い労務費」に該当する恐れがある。建設Gメンによる調査で、こうした不適正な取引を把握しやすくする。
下請けに見積もり依頼していなくても、労務費や必要経費を下請業者まで確保する必要があることを明確化する。必要に応じて下請けに見積もり依頼を行い、工事全体で無理な契約とならないよう元請けに促す。
労務費を内訳明示する際は、総額の他に歩掛かり、特記仕様・条件を明記する。
労務費以外にも法定福利費や安全衛生経費など、幅広い経費が改正法に基づく必要な経費となり得る。見積書では、簡易な方法による内訳の示し方も許容する。
元請けと下請けの間や、上位下請けと下位下請けの間でやりとりする見積書については、各専門工事業団体に「標準見積書」を作成してもらう。国交省は団体向けに作成の手順を示すとしている。
既に法定福利費や安全衛生経費を内訳明示した見積書を作成している団体もある。改正法に基づく「労務費の基準」を踏まえ、労務単価に歩掛かりと作業量を乗じた労務費を明記する形で標準見積書を見直し・作成してもらう。
提供:建通新聞社