全国中小建設業協会(全中建、土志田領司会長)と国土交通省が全国で開いたブロック別意見交換会が、12月6日までに全ての日程を終えた。土志田会長が意見交換で訴えたのは「10年先が見えない」という中小建設業の厳しい採用の現実だ。現場を支えてきた高齢層の一斉退職は目前に迫っている。土志田会長は、企業が担い手を将来にわたって確保し続けられる「適正な利益を上げられる業界へと建設業を再生しなければならない」と力を込める。
2025年には、団塊の世代が後期高齢者(75歳以上)になる。全中建の会員企業には、技能者を直接雇用する企業が多く、「この数年で、人手不足に対する危機感が急速に高まっている」と感じている。地方に比べて若年人口の多いはずの首都圏でも「今までと違うレベルで人手不足が進んでいる」と話す。
全国6カ所で開いた意見交換会の終了後、政府・与党の幹部らと面会し、「10年後に今と同じように建設業に担い手がいるか、見通しがつかない」と、中小建設業が抱えている不安を伝えた。12月2日の中央建設業審議会の席上でも、担い手確保のために早急に対策を講じるよう求めた。
「技能者・技術者の賃金を大幅に引き上げなければ、担い手不足の問題は解消できない」との考えを示す一方、そのためにも企業が適正な利益を確保できる環境整備の必要性を改めて訴える。
特に、市町村の発注工事で落札額が予定価格80〜90%となり、適正な利潤が確保できていないことを問題視する。最低制限価格や低入札価格調査基準価格の引き上げ、予定価格の上限拘束性の見直しを強く求める。
地方自治体の最低制限価格・調査基準価格については、地元の神奈川県を例に挙げ、「自治体が中央公契連モデルを上回る独自の基準を設定することは可能だ」と指摘。全国の自治体で見ても、2022年度の最新モデルを上回る基準を設けている自治体は少なくない。
第3次担い手3法では、国が入札契約適正化指針に沿った措置を自治体に助言・勧告できるようになった。「地域発注者協議会などの効果で、都道府県では発注関係事務の改善が進んだが、市町村に対しても強い指導を求めたい」と強調した。改善が進まない市町村に対しては、「首長や市町村議会を通じ、われわれ業界としても直接改善を働き掛けなければならない」と続けた。
提供:建通新聞社