国土交通省は、直轄土木工事の受発注者や設計者が事業単位で情報を共有するための新たなプラットフォーム「プロジェクトCDE」の導入を検討している。従来、工事ごとに受発注者間で完成図書や帳票などを保管していた電子納品保管管理システムとは別に、維持管理段階へと円滑にデータを引き継いだり、事業中の受発注者のやりとりを記録することで、インフラ整備の円滑化、事業監理の高度化を図るのが狙いだ。2027年度の本格導入を目指す。
発注者の視点から今後の建設生産・管理システムの在り方を議論する懇談会を12月6日に開き、データマネジメントの高度化に向けた取組方針案として打ち出した。CDEは共通データ環境の頭文字で、測量データや設計図面、打合せ簿など直轄事業に必要なデータを一元的に保存・共有するプラットフォームの役割を担う。ISO19650に準拠し、データの作成・承認履歴を記録できるようにする。
現行では同じ事業であっても、測量業務や調査業務、設計業務、工事といった工程ごとに受発注者で前工程の成果物や打合せ簿、図面などのデータをやりとりしている。受発注者間のやりとりは受注者が契約した情報共有システム(ASP)で行うため、業務・工事の終了後には打ち合わせの経過などの情報が失われてしまうという。
工事完成図書などの電子成果品は電子納品・保管管理システムに保管される。例えば事業条件の見直しに伴い、発注者が設計成果を加工・更新して利用することもあるため、必ずしも最新のデータが保存される仕組みとなってはいない。次段階の工程で参照すべきデータの所在が不明確だったり、確認に時間を要したりする実態があり、古い図面で積算してしまう問題などが生じていた。
そこで、事業期間中に工事・業務の発注者と測量、設計、施工、維持管理など各段階の受注者が一元的に情報を共有できるだけでなく、データの更新状況を含めて継続的に把握できるプロジェクトCDEを構築する。データの収集・加工に要する作業を省人化するとともに、品質やコスト、安全、環境といった事業監理の高度化に生かす。
具体化に向け、24年度中にデータマネジメント取組方針をまとめる。25年度に検討体制を整え、i−Constructionモデル事務所でデータに基づく事業監理を試行。26年度には、必要な人材育成指針の策定と並行して、発注者支援業務「プロジェクトデータ監理業務」の仕様を作成する。試行結果に基づいて指針を定め、27年度以降、大規模事業からプロジェクトデータ監理業務を適用し、段階的に拡大する。
提供:建通新聞社