国土交通省は、監督検査の効率化に向け、拡張現実(AR)技術の活用を出来形管理要領に盛り込むことを検討している。3次元計測技術で取得した点群データと施工段階で作成した3次元モデルを重ね合わせ、現地で投影して出来形を確認する。出来形管理図表を省略できたり、遠隔での立ち会いが可能になるなど、受発注者双方にメリットがあるという。11月20日に首都圏中央連絡自動車道(圏央道)の盛土施工現場(茨城県つくば市)で試行検証を行った。
従来手法では、受注者が3次元モデルと点群データを重ね合わせて出来形を評価し、出来形管理図表(ヒートマップ)を作成・提出していた。仕上がりが不十分な箇所を修正施工する際、ヒートマップと現地を照らし合わせるのに手間がかかる他、現地立ち会いの要員を確保する必要があるなどの課題があった。
ARを用いると、出来形管理図表の作成・提出を省略できる。修正施工の必要な位置を把握し、重機オペレーターに伝えることも容易だ。検査に対応する受注者側の人数も少なくて済む。
20日の見学会では、工事を受注した金杉建設(埼玉県春日部市)が、ARのデモンストレーションを行った。修正を要する箇所の代わりに発砲スチロールのブロックを置き、点群データ・3次元モデルを重ね合わせてタブレットに表示。精度や、現地でどのように見えるかを確認した。
工事を発注した北首都国道事務所の後閑浩幸所長は「ICT施工自体は一般化したが、その後の出来形確認においても生産性を高めることができる」とAR活用の意義を強調。現地での確認が円滑になるだけでなく、遠隔臨場のさらなる普及にもつながるとした。
国交省は別の現場でも試行検証を実施し、監督検査での精度などを確認。従来手法と比べて十分な有効性を確認できれば、2023年度内に基準化し、24年度にも適用を開始したい考えだ。
金杉建設はこの現場で、監督検査の他にもBIM/CIMの3次元モデルを活用。軽量盛土の形状が複雑な現場だったことから、3次元モデルでポンプ車や材料の配置、施工手順をシミュレーションし、協力会社との打合せに生かした。現場に3次元モデルを投影して安全教育を行った他、足場の設置場所の検討、地権者への説明にも活用したという。
同社の小俣陽平インフラDX推進室長は、「監督検査だけでなく、幅広い場面でARを生かす受注者の工夫≠ェ重要になる」と話している。
提供:建通新聞社