国土交通省は、改正建設業法により資機材価格高騰のリスク情報を発注者に事前通知する義務が12月から受注者に課されるのに合わせ、受発注者間と元下間の建設業法令順守ガイドラインを改正する。通知すべき「主要な資機材」の考え方を整理するとともに、通知する際の根拠情報を例示。通知内容に沿った契約変更に際し、変更協議の拒否や遅延、一方的な協議の打ち切りといった、発注者の「誠実な協議」違反の事例も示した。
リスク情報の事前通知を受注者の義務としたのは、価格高騰時に発注者との協議が円滑に進むようにするため。リスクが実際に顕在化し、受注者が金額や工期の変更を申し出たとき、発注者には誠実に応じる努力義務が課される。
国交省がまとめた法令順守ガイドラインの改正案では、主要な資機材や特定工種の労務の供給の不足や遅延、高騰を事前通知の対象に位置付けた。資機材が主要に当たるかどうかは、数量や使用頻度、工事原価に占めるウエート、施工への影響から判断する。資機材の種類、価格の基準日の明示を求める。
契約時点でまだ発生していない天災は予測が困難なため、通知の義務の対象とは扱わない。
リスク情報の通知から発生までは一定の期間が見込まれるとし、短工期の工事での適用は想定しにくいとの解釈も示した。
リスク情報とともに通知すべき根拠情報も例示する。通常の事業活動で把握できる範囲とし、メディアの記事や資材業者の記者発表、公的機関・業界団体の統計資料などを例示。情報源を明示する必要があるとした。資材業者1社が口頭でのみ示した情報は、真偽の確認が難しいため対象とならない。
通知は書面やメールなどで行い、記録を受発注者で保存することが望ましいとした。
設計図書と施工環境の不一致は、事前通知すべきリスク情報とはしない。受注前の現場確認を徹底することとし、不一致が契約後に明らかになったときは既存の変更協議の枠組みで解決する。
契約書面に記載する、請負代金額の変更方法も例示する。「変更しない」といった規定は協議を妨げるため、建設業法違反となる。
発注者の「誠実な協議」違反の事例も示す。具体的には▽協議の開始自体の拒絶▽協議の遅延▽受注者の主張の一方的な否定▽一方的な協議打ち切り―が該当する。
リスク情報は契約前に通知する。入札で施工者を決める民間工事では、発注者が入札段階で通知方法、通知のタイミングを周知する。
公共工事では、落札決定してから契約締結までの間に通知すべきとした。既に公共工事標準請負契約約款に整備されている、スライド条項の規定に沿った対応が原則となる。また、公共発注者は受注者からの変更協議に誠実に応じる義務が課される。
この他、ガイドラインの改正案では、民間工事について、民間工事標準請負契約約款や民間(七会)連合協定工事請負契約約款に沿った契約を締結するよう記載内容を見直した。
提供:建通新聞社