国土交通省は11月7日、社会資本整備審議会住宅宅地分科会に設置したマンション政策小委員会の初会合を開いた。法務省による区分所有法の改正動向を踏まえ、マンション建替法に基づく再生手法の拡充を検討する。耐震性不足や管理不全の場合に地方自治体が除却・建て替えを働き掛けの強化をはじめ、制度的な対応を議論する。
国内に約700万戸あるマンションストックのうち、築40年以上は約2割を占める。建物に加えて居住者も高齢化したことで、管理組合の担い手不足や、建て替えの合意形成ができないといった課題が顕在化している。
政府はマンション建て替えの促進に向けて、区分所有法を改正して決議要件を緩和する方針だが、6月に閉会した通常国会への提出は見送った。年内の臨時国会で審議時間を確保できるかも不透明で、その場合は2025年1月に開会する次期通常国会での提出が見込まれる。
国交省では、区分所有法の改正を見越し、マンション管理適正化・再生円滑化の制度的対応を検討。マンション政策小委で議論し、25年1月〜2月にも対応をまとめる。
開会に当たり、国交省の楠田幹人住宅局長=写真=は「重要なポイントの一つは地方自治体の関与の強化」と述べた。20年の法改正により、マンション管理適正化のための助言・指導・強化が可能となったものの、活用例は9団体35件にとどまる。自治体から、さらなる権限強化を求める意見も寄せられているという。
現行では、要除却認定制度に基づく建て替え・除却を自治体が誘導する制度もないため、管理と再生の両面で自治体の関与を強化する方策を検討するとした。
委員からは、事業性が高い首都圏でマンション建て替えが円滑に進む一方、地方では解体も進まず、多数の廃墟が発生する恐れがあるとの指摘があった。このため、マンション管理への自治体の関与強化、不良なストックの除却促進に向けた事業メニューの拡充と決議の簡易化が必要との意見が出た。
区分所有法への対応では、決議後の建て替えを円滑化するため、組合設立など新たな事業手続きを整備する。1棟ごとのリノベーションや、建物敷地売却など、今後の区分所有法改正に基づいて新たに可能になると見込まれる決議への対応も整備する。
提供:建通新聞社