国土交通省は、改正建設業法に基づく労務費の基準の実効性確保に向けて、公共工事の特性を踏まえた取り組みの方向性案を示した。発注者が入札段階で適正水準の労務費が確保されていることを確認するとともに、末端の技能者まで適切に支払われるよう重層下請け構造の中でフォローアップする。11月6日に開いた中央建設業審議会のワーキンググループ(WG)=写真=で提示した。
国交省は労務費の基準による技能者の処遇改善の実効性確保策を、請負契約での労務費確保と、技能者への着実な賃金支払いの二つに分類。
請負契約段階での対応としては、建設業団体ごとに労務費を含めた見積書のひな形を作成できるよう、国が手順を示す。元請け・下請け間の交渉のガイドラインも整える。賃金支払いの段階では、適切な支払いを約束するコミットメント条項の標準約款への追加を盛った。
特に公共工事の特性を踏まえた対応としては、入札段階で適正水準の労務費が確保されていることを発注者が確認するとのイメージを示した。
労務費が重層下請け構造の中で末端の技能者にまで行き渡っているか、過度な負担にならないよう配慮した上で発注者がフォローアップするとした。公共工事で適切な賃金支払いを担保するモデル工事や、直轄工事での賃金支払い状況調査を試行するとした。
WGでは、岡山県建設業協会の荒木雷太会長が材工分離で入札し、労務費については最低制限価格を100%とすることで切り下げを防ぐアイデアを披露した。
全国中小建設業協会の河ア茂副会長は「労務費確保には入札契約制度の見直しも検討してほしい」と述べた。自治体によって異なる最低制限価格の設定状況も課題として、改善を求めた。
公共発注者の支援を手がける山下PMCの丸山優子代表取締役社長は、PFIのようにあらかじめ仕様や数量を確定できない事業手法では、事前の労務費の積算が難しい点を指摘した。
民間工事での実効性確保を巡っては、日本建設業連合会の相良天章賃金・社会保険専門部会座長が「受発注者間の契約で(労務費の)原資を確保することが前提」と述べ、片務的な契約を防ぐ必要があるとした。
全国建設労働組合総連合の長谷部康幸賃金対策部長は下請け側からの価格交渉の難しさを指摘し、発注者や元請けに一定の責任を求める契約が必要だとした。
提供:建通新聞社