東日本建設業保証が同社管内23都県の中小建設業約2万社を対象にまとめた「建設業の財務統計指標」(2023年度決算分析)によると、企業の収益力を総合的に表す「総資本経常利益率」は平均4・06%となり、前年度よりも0・26ポイント低下した。21年度から3年連続の低下となる。ロシアのウクライナ侵攻以降続いている資材価格の高止まりや、労務費の上昇によって、中小建設業の収益が圧迫される状況が続いている。
総合工事業、電気工事業、管工事業のうち、兼業売上高が総売上高の20%以下の中小建設業を対象として、23年4月期〜24年3月期の決算書を集計・分析した。集計の対象は土木・建築2266社、土木9239社、建築2365社、電気3093社、管3611社の合計2万0574社。
総資本経常利益率は、06年度以降で上から10番目の水準となる。財務力を含めた総合的な収益力を表す「売上高経常利益率」も3・07%となり、0・23ポイント低下した。21年度から3年連続の低下となる。
総資本経常利益率が低下した背景には、資材価格や労務費の上昇に加え、受注減少の影響もあるという。
総資本経常利益率を地区別に見ると、東日本大震災の復興事業が収束した岩手県が最も低い0・94%、次いで宮城県の1・68%となり、平均を大幅に下回った。利益率が最も高かったのは福井県の6・10%で、北陸新幹線の整備によって県内受注が伸びたことが背景にあるとみられる。
業種別の総資本経常利益率は、電気が5・38%と最も高く、管の4・64%、土木建築の3・89%、土木の3・83%、建築の2・55%の順に低くなっている。
一方、生産性の代表的な指標である「1人当たりの付加価値」は、前年度の1154万円から1171万円に上昇。1人当たりの付加価値が最も高かったのは東京都の1347万円で、愛知県の1290万円が続いた。大型工事が多かった都市部がけん引し、生産性が向上した。
財務体質の健全性を表す「自己資本比率」は、42・90%と前年度よりも1・13ポイント上昇した。自己資本比率は東北6県の平均が47・05%と最も高い。東北は、収益性の低下は見られるものの、東日本大震災の復興事業で得られた利益の蓄積があるとみられる。
提供:建通新聞社