国土交通省は、改正建設業法に基づく「標準労務費」の作成に向け、民間建築工事を対象とした工事費の内訳調査・分析事業を2025年度に行う。直轄工事で施工実績がない、個人住宅の建築などに関わる職種・工種でも労務費の基準を作成する必要があるため、請負契約の内容を詳しく調べる。2025年度予算に事業費7000万円を計上している。
改正建設業法では、末端の技能者に賃金が適切に支払われるよう、原資である労務費の基準を中央建設業審議会が作成・勧告できることとしている。建設業者が基準に基づく標準労務費を著しく下回るような見積もりを提出したり、契約したりすることを禁止。重層的な下請構造の中で、労務費が目減りしないよう担保する仕組みとなっている。
労務費の基準は、単位施工量当たりの人件費として示される。9月に開いた中建審のワーキンググループでは、公共工事設計労務単価に歩掛かりを乗じて算出するとの方向性を提示。25年11月ごろまでの勧告を目指すとのスケジュール感を示していた。
建設技能者の処遇改善に向けた労務費の基準は、幅広い職種や工種を網羅して整備する必要がある。直轄工事で実績がなく、公共工事設計労務単価が整備されていない工種の労務費を把握するため、調査・分析事業を新たに実施することにした。民間建築工事の請負契約の内容や、請負金額に占める労務比率を調べる。
事業費には、ワーキンググループの運営や業界団体へのヒアリングに要する費用も盛り込む。労務費の基準の基本方針や作成方法、実効性の確保策についてもワーキングで検討する。調査・分析の結果を踏まえ、労務費の基準の素案を検討する。
一方、直轄工事で実績のある約1000の工種については、23年度に委託した調査業務の中で労務費の基準の作成に必要検討作業を行っている。工種ごとに標準的な規格の歩掛を設け、労務費の基準とする方向だ。
実際の運用では、標準労務費を「相場観」として機能させる。悪質な取引は事例集の形で示し、法令違反をけん制する。
提供:建通新聞社