国土交通省は、災害現場での導入が中心だった遠隔施工を一般工事に拡大する。オペレーターの安全確保に加え、働き方の柔軟性を向上させたり、労働環境を改善させたりすることにつなげる。遠隔施工の適用範囲に関する指針や技術基準類を2028年度までの5年間で整備する。並行して試行工事、モデル工事も随時実施する考え。
遠隔施工は、オペレーターが建設機械に搭乗せず、遠隔で操作するもの。従来、土砂崩れの発生現場など、オペレーターが2次災害にあう恐れのある災害対策工事で活用されてきた。
国交省は、遠隔施工が現場の省人化にも生かせることに着目。4月に打ち出したi−Construction2・0の中で、遠隔施工を主要な施策の一つに位置付けた。自動施工の実現による生産性向上を見据え、人が立ち入らない現場で安全・効率的に作業できる遠隔施工技術を通常工事にも取り入れることにした。
主な遠隔施工の事例を直轄工事で見ると、中部地方整備局の「地獄谷砂防堰堤工事」では作業員の安全に配慮し、簡易遠隔操縦により無人バックホウを操作して土砂を撤去した。一方、北陸地方整備局の「大河津山地部掘削その23他工事」のように、コマツ・EARTHBRAINによる建機向けの遠隔操作システムを導入し、一つのコクピットから2機の遠隔バックホウを切り替えながら施工するなど、生産性向上に生かしている事例もある。
国交省では、こうした活用事例を調査し、発注・監督・検査に関する基準類を26〜27年度にかけて整備し、順次公表する。
その上で、災害復旧や砂防工事など従来の適用範囲以外にも遠隔施工を活用するため、適用を推奨する範囲を示す指針を作成する。25〜26年度にも作成作業を開始する。
基準類などの環境整備と合わせて課題となるのが、オペレーターの人材育成だ。全国の技術事務所では、遠隔操作対応建設機械を保有しており、災害協定の締結企業を中心として現在も座学、実技による講習を行っている。こうした取り組みも参考に、遠隔施工の知識と技能を持つオペレーターを育成する。
提供:建通新聞社