長時間労働を是正するための発注関係事務の改善が、特に市区町村発注の公共工事で遅れている。全国建設業協会(全建、今井雅則会長)のアンケート調査によると、工事書類が簡素化されたと回答した会員企業は国土交通省の78・9%に対し、市区町村34・5%。市区町村は、休日明けを依頼の期限としない「ウィークリースタンス」の活用が22・9%(国交省62・3%)、設計変更手続きを迅速化する設計変更審査会の活用が27・1%(同78・7%)となるなど、発注者間の対応の差は依然として大きい。
全建は、品確法の運用指針への対応を7月に調査。47都道府県建設業協会と会員企業2202社が回答した。
時間外労働の上限規制に対応するため、国交省は五つの支援メニューをまとめるなど、書類作成業務の削減に力を入れている。調査では、直近1年間で書類の簡素化が進んだか発注者別に回答を求めたところ、「進んでいる」「一部進んでいる」との回答は、国交省が78・9%と最も高く、都道府県・政令市が50・9%、市区町村が34・5%と対応に大きな差が生じている。
自由回答では「少額工事で書類が多いのは負担」「減る書類より増える書類の方が多く、簡素化が感じられない」といった不満の声が聞かれた。
国交省の直轄工事で活用しているウィークリースタンスは、都道府県・政令市も30・3%にとどまった。市区町村は22・9%とさらに活用に進んでいない。設計変更手続きの迅速化・透明化のために受発注者が協議する設計変更審査会も、市区町村は27・1%と活用が進んでいない。
都道府県協会に対する調査では、週休2日工事について「進んでいない」との回答が国交省がゼロ%、都道府県・政令市が4・3%だったのに対し、市区町村は83・0%と突出して高い結果も出ている。
一方、設計変更については、「問題を感じている」と回答した会員企業が市区町村で60・6%(国交省38・9%)に上った。ただ、発注者協議などの事務作業負担が大きいと感じている会員企業は、市区町村の51・3%と比べ、防衛省が87・2%、国交省が75・6%と国の発注機関の方が高い傾向にある。
■賃上げ率「3〜6%」が最多
アンケートではこの他、資材価格の高騰を受けたスライド条項の適用申請についても、発注者別に回答を求めた。「申請し、適用された」との回答は国交省の48・7%が最も高く、都道府県の33・7%、市区町村の18・1%が続いた。これに対しても、監督職員が「発注者側で作成すべき書類を受注者に作成させようとする」といった声があった。
この他、賃上げに対する設問では、79・5%が賃上げを実施したと回答。賃上げ率は「3〜6%」が32・1%で最も多く、「1〜2%」の28・1%、「6%以上」の7・0%が続いた。
提供:建通新聞社