国土交通省は、建設機械施工を自動・自律で行うための安全ルール(バージョン1)を4件の直轄工事に初めて適用する。試行による検証結果を踏まえて「バージョン2」のルールを策定し、自動施工の普及につなげる。中小建設会社を含めて受注者向けに自動施工の導入のためのアドバイスを担う人材育成にも取り組む。学識者や関係団体が参画する協議会を9月20日に開き、ロードマップ案に盛り込んだ。
安全ルールは、自動施工の安全確保のために順守すべき項目をまとめたもの。現場内に人が立ち入らない無人エリアを設けることや、非常停止システムの設定などを柱とし、建機メーカーや施工者の実施事項を示している。国交省は3月に安全ルールの「バーション1」を策定。自動施工技術を取り入れている現場で順次、試行を進めることとした。
初弾は、東北地方整備局が発注する成瀬ダムの「堤体打設工事」と「原石山採取工事」、関東地方整備局発注の「霞ケ浦導水石岡トンネル新設工事」と「浅間山火山砂防(地蔵川砂防堰堤工事)」の4件。現場で得たデータをリアルタイムに活用する施工をまず実現し、6〜10年後にも大規模土工現場での導入につなげたい考えだ。
安全ルールの「バージョン2」と、ルールに対応した建機の機能要件を策定するため、実工事以外に模擬現場でも現場検証を予定。全国から公募した建設会社、建機メーカー、スタートアップなど21者が参画し、地盤改良や草刈り、掘削積み込みなどの幅広い作業を検証する。安全ルールは24年度、機械機能要件は25〜26年度の策定を見据える。
機電部門のある大手ゼネコンは別として、中小建設会社にとって自動施工を導入するハードルは高い。そこで、自動建機やシステム、通信設備の知識を備え、発注者や下請け、建機メーカーなどとの調整を担う「自動施工コーディネーター」の育成にも取り組む。内閣府の予算を活用して自動施工に携わる人材を調査・整理し、25〜26年度にも育成プログラムを整備する。
建設会社が自動施工を導入するメリットや段取りを把握できるよう、現場条件などに応じて自動施工の導入方法を示すシミュレーターも作成する。企業内での講習にも活用してもらう。
建機メーカーの枠を超えて自動建機を制御できるようにするため、共通制御信号の開発にも取り組む。土木研究所が中心となって原案を作成。建機メーカーによるブラッシュアップを経て、建設施工の自動化・自律化協議会に提言する。
提供:建通新聞社