国土交通省は、建設業の賃上げ促進、処遇改善のため、建設業法に基づいて実地調査を行う建設Gメンの取り組みを強化する。建設工事の取り引き実態に関する書面調査の対象を拡充する他、一般からの通報対応をICTにより効率化。不適正な取り引きをより効果的に抽出できるよう体制を整え、Gメンによる実地調査の精度を高める。2025年度当初予算の概算要求に必要な費用を計上した。
改正建設業法に基づく労務費の確保や、時間外労働の罰則付き上限規制に適応した働き方の実現といった建設分野の課題に対応するには、建設Gメンによる取り引き実態の調査や改善指導が欠かせない。国交省は概算要求の中で、Gメンによる取り組みの強化を打ち出した。
建設業の請負契約に関する実態を書面で調べる下請取引等実態調査については、対象を大幅に拡充し、より小規模な事業者も対象にする。不適正な取り引き状況を抽出して精査することで、Gメンによる実地調査の実効性を高める考えだ。法令違反が明らかになれば、強制力のある立ち入り検査などより、踏み込んだ対応を取る。
改正建設業法では賃金の原資となる労務費の確保や工期ダンピングの禁止など、請負契約に関わる幅広い内容を規定している。改正法の施行に伴って建設Gメンへの通報件数が増加することも見込まれ、国交省はICTを活用した対応の効率化を検討する。基礎的な内容や質問についてはホームページ上の問い合わせフォームで対応したり、人工知能(AI)を活用して対話形式で回答するチャットボットなどの導入も想定。より違法性の疑わしい相談を抽出できるようにし、建設Gメンによる対応の実効性を高める。
建設Gメンの体制も強化する。地方整備局の職員を中心としており、24年度にはそれ以前から倍増の135人体制とした。今後、関連する業務の増大に対応するため、定員のさらなる確保に加え、委託などの形でGメンの補助人員を設けることも視野に入れる。書面調査の拡充により増加する書類の精査をはじめ、実地調査の前さばきを担ってもらうイメージだ。
建設Gメンの実地調査は、改正建設業法の施行を見据えて24年度から内容を見直している。労務費見積もりの算出根拠を確認し、不適当な金額となっていないかや、指値発注の有無などを把握する。労務費の価格交渉が政府の示した指針に沿っているかや、3月に改正した適正工期の基準を順守しているかも調査対象となる。
提供:建通新聞社