国土交通省は9月10日、改正建設業法に規定された「労務費の基準」の具体化に向け、中央建設業審議会のワーキンググループの初会合を開いた。これからの議論の土台として、基準の目的を請負契約の交渉時の相場観、行政が指導監督する際の参考指標とする基本方針を提示。基準に基づく見積もりと書面契約を業界慣行とするなど、実効性確保へ事業者・業界にも積極的な関与を求める。2025年11月までに中建審が基準を作成・勧告する。
平田研不動産・建設経済局長は議論の開始にあたり「基準を建設業に関わる全ての方々に活用してもらう必要がある」と発言。発注者と元請け、専門工事業者のパートナーシップが重要だとし、商慣習の見直しに向けた議論を求めた。
労務費の基準は、建設工事の請負契約で、技能者に支払われる賃金の原資となる労務費の水準を示すもの。著しく下回る見積もり・契約を禁止することで、重層的な下請け契約でも技能者が受け取る賃金が目減りしないよう担保する。これまでに、公共工事設計労務単価をベースに、歩掛りを乗じて地域別・職種別の基準を定めるイメージが国会審議などで示されていた。
10日のWGでは、労務費の基準に関する基本方針として、労務費を確保することで技能者に適正な賃金を着実に行き渡らせることを目指す方向性を共有。請負契約時の価格交渉で相場観を示すため、中小事業者や一人親方を含めて活用方法を分かりやすく示すとした。契約時には基準に基づく見積もり、書面での契約を業界慣行とする。
具体的には、技能者の職種ごとに、単位施工量当たりの金額を設定することを基本とする。事業者の使いやすいよう、工種・規格の違いによる細分化は最小限にとどめる。
基準により技能者が受け取るべき最低限の水準は示す一方で、1人が1日に可能な作業量など、生産性を事業者間の競争の余地として残す。
いったん基準を公表した後も、必要に応じて修正を加える「アジャイル型」での運用を想定。全ての職種・工種で一気に基準を定めるのではなく、準備の整った職種から順次、検討を進める方向だ。
処遇改善の取り組みに関する受発注者双方への取り組み状況調査や、改正建設業法に基づく指導監督、勧告・公表などの規制的手法により実効性を担保する。契約時に労務費支払いに関する表明保証を行うことも視野に入れる。
検討に当たっては、業界団体の積極的な関与が重要になる。専門工事業団体などに対し、職種別の基準の素案検討や、中小事業者へのフォロー体制の整備などに関与してもらう。
提供:建通新聞社