日本建設業連合会(日建連、宮本洋一会長)は、民間建築工事での残業時間抑制に向けた「適正工期確保宣言」について、2023年度下半期のフォローアップ調査の結果をまとめた。宣言を踏まえ、現場の4週8閉所と週40時間稼働を前提とした見積もりを提出した工事のうち、見積もりが契約に反映された工事は全体の82・7%。時間外労働の上限規制の適用を間近に控え、民間発注者の理解が進んだことが高い契約率につながった。
適正工期確保宣言は、現場の4週8閉所と週40時間稼働を原則とした工期を「真に適切な工期」と位置付け、日建連会員企業がこれを前提とした工期で見積書を提出するとしたもの。働き方改革を実現するため、会員各社が工期ダンピングを行わないことを実質的に宣言している。
23年度下半期の調査は▽請負金額1億円以上または工期4カ月以上▽労働基準法第33条の適用を受ける現場を除外▽JV工事はスポンサー工事を対象―といった条件で対象工事を選んでもらい、対象工事のあった73社の回答を集計した。
調査結果によると、経営トップからの通達・指示によって「真に適切な工期」に取り組んだ企業は全体の83・6%。このうち、原則全ての案件で「真に適切な工期の確保」に取り組んだ会員は58・9%に上った。
回答企業が23年度下半期に提出した初回見積もり2426件のうち、「真に適切な工期」で工程を算出し、発注者に見積書を提出していた工事は1849件(76・2%)だった。さらに、発注者が指定した工期で見積書を提出しても、会員企業が「真に適切な工期」への理解を求めた工事も482件(19・6%)あった。
見積書の契約への反映状況を見ると、「真に適切な工期」で見積書を提出し、23年度下半期に契約した1154件の工事のうち、見積書が契約に反映された工事は955件(82・7%)に上った。
「真に適切な工期」が契約に反映された工事は、「設計・施工の共同住宅で受注者側で工期設定が可能だった」などの理由が上がった一方、「『2024年問題』が報道され、発注者から理解を得やすい状況にあった」「発注者が人手不足や資材価格の高騰などに時間が掛かることを理解してくれる」など、時間外労働に対する民間発注者の理解が進んでいる傾向も見られた。
ただ、リニューアル工事や補助金事業は工期に制約があり、見積もりが契約に反映されなかった事例もあったという。
提供:建通新聞社