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2024/07/30

建設トップランナーフォーラム「DXが地域建設業の未来を拓く」B

 舗装工事業の愛亀(松山市)は、農業、産廃、生コン、砕石、建築、造園など12社をグループ企業として傘下に置く。道路管理営業部の西山諒氏が「農商工による6次産業化のDX」と題し、同社グループ企業の取り組みを紹介した。
 グループ企業の一つである農業生産法人「あぐり」は建設工事の閑散期の技術職員・技能職員の余剰化を防ぐため、技術職員らの雇用維持や流動化を目的に2000年に設立。地域農業の担い手として循環・環境保全農業を目指している。
 食品かすなどを受け入れ、チップ化し、養豚場で床材として利用。その床材は養豚場の豚ふんと混ぜ、堆肥としてリサイクルするなど地元の畜産農家と連携する。また、有機微生物群の培養にも取り組んでおり、同社で培養した「あぐり菌」は松山市のごみ処理場などで消臭作業に活用されている他、水質改善や汚泥削減の効果もあるため水路浄化作業にも役立てられている。
 また、豚ふん堆肥は造園部門での利用をはじめ、一般農家への販売、農業施設の建築については生コン部門や建築部門で行い、砕石部門では砕石跡地の再緑化計画に豚ふん堆肥を利用して植樹を進めるなど、企業グループ内で一体的な連携を図り、6次産業化している。
 この他、大学や企業とDXの取り組みで連携している。愛媛大学との取り組みでは収穫した耕作地ごとにタンパク質やアミロースなどのデータを採取し、天候や堆肥の散布状況と絡めてデータ管理を行っている。東京農工大学との取り組みでは全窒素や全炭素などを測定するトラクター搭載型の土壌診断システムを活用し、メッシュマップによる見える化によってピンポイントでの土壌改良を実現した。
 また、衛星から得られるデータと民間企業が開発した営農アプリを利用して愛媛県の特産米「ひめの凛」の育成を監視して愛媛栽培モデルの確立を目指す栽培DX加速化プロジェクトに参加。田植えや肥料散布時期、天候、気温などを自社の独自データとして集積し、原材料の調達から生産、消費・廃棄まで追跡可能なトレーサビリティに優れた営農に取り組んでいる。
 最後に西山氏は「雇用の維持のために設立したあぐりが、結果的に技能者の流動化や育成にもつながった」と話し、「小さなデータの積み重ねがわれわれのDXだと考えており、DX化によるさらなる大規模有機農法の確立に向けてPDCAを繰り返していく」と発表を締めくくった。
(地方建設専門紙の会・建通新聞社)