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2024/07/11

オンライン方式、引き続き3割で 労務費調査

 国土交通省は、公共工事設計労務単価を設定するために賃金支払いの実態を調べる「公共事業労務費調査」で、今年10月の実施分について、オンラインと書面の双方での対応を可能とする。2023年度に本格運用をはじめたオンライン方式は全体の3割程度に適用する見通しだ。オンラインでの書類記入に不慣れな人も多い中、制度を周知して回答を着実に回収することに力点を置く。書類等の不備による棄却の削減にも注力する。
 労務費調査は、国交省と農林水産省が毎年10月に実施している。両省発注の1件1000万円以上の工事から、約1万工事を無作為抽出し、工事に従事する約11万人の技能者に支払われた労務費を把握する。必要に応じて賃金台帳や工事日報とも照合し、労務単価を設定するための基礎資料とする。
 従来は書面と対面による調査を行っていたが、コロナ禍を契機にオンライン方式を試行導入。23年度は全体の約3割を対象とし、拡大も視野に入れていた。今回は回答の着実な回収に注力することとし、引き続き対象工事の3割程度にオンライン方式を適用する方向だ。調査票の提出・管理・審査をシステム上で行い、調査業務を効率化する。建設業団体などを通じて周知していく。
 オンライン方式以外では書面による調査を基本とし、一部で対面調査を残す。調査対象工事の選定、対象業者への通知は8〜9月を予定している。
 これまでは法定福利費控除額における雇用保険の記入欄の上限を9999円としていたが、今回から1万円以上でも記入できるようにする。高給な技能者の法定福利費の実態を含め、適切に反映できるようにする。
 有効標本数の確保も課題となる。23年度調査では、回答があったものの▽根拠資料の提示がない▽賃金受領を示す押印がない▽就業規則に定めている労働時間が、法定労働時間内であることが確認できない―などの理由で標本とせず、棄却する例が全体の2割程度あったという。このため、元請け・下請け企業に書類の適正な提示を呼び掛ける。
 改正建設業法を巡る国会質疑では、中央建設業審議会が今後作成する「労務費の基準」の検討に当たり、労務単価を活用するとの方向性が示された。民間工事を含めた労務費の在り方にも影響するだけに、公共工事労務費調査の位置付けは一層、重要なものとなりそうだ。

提供:建通新聞社