政策研究大学院大学の家田仁特別教授=写真=は7月5日、国土技術研究センター(JICE)が開いた技術研究発表会で講演し、「われわれの『インフラ観』を予定調和の世界観ではなく、進化の世界観へと転換すべきだ」と訴えた。家田教授は、災害や事故を契機にインフラが進化してきた経緯を振り返り、「事故や災害だけでなく、英断によってインフラを進化させる必要もある」と強調した。
「転換期の日本とインフラ観の展開」をテーマに講演した家田教授は、70年かけて整備されてきた高速道路が「長時間の蓄積によって進化してきた」と述べる一方、「蓄積には長い時間が必要で、事故や災害などの事態が起きなければすぐに進化することはできない」とも話した。
具体的には、阪神・淡路大震災の被害を受けて導入された橋梁の「二段階設計法」、東日本大震災後の堤防に導入された「粘り強い構造」などを例示。さらに、能登半島地震の盛土構造の高速道路の被害にも触れ、「高盛土の構造物が大規模に崩壊し、復旧に時間を要している。このままでは国民の負託に応えることができない」と改善の必要性を指摘した。
一方で、「インフラの進化が悲しい事故や災害だけで進むのではなく、(インフラ管理者らの)英断によって進むこともある」と強調。「予定調和に陥るのではなく、ダイナミックに進化する必要がある。新たな概念を創出し、それを発信していくべきだ」と訴えた。
続いて登壇したJICEの徳山日出男理事長も「今後のインフラ政策の主力とは何か」をテーマに講演した。徳山理事長は「インフラの整備量ではなく、社会課題の解決にこそ未来がある。解決力があることを示せば、社会は支持してくれるはずだ」と主張。
社会全体が災害を自分事≠ニして捉えるために施策体系と行動計画をまとめる「災害の自分事化」、公共調達に脱炭素の要素を追加した「脱炭素施策の主流化」、物流構造を転換する切り札として期待されている「自動物流道路」などを挙げ、政策立案に注力する考えを示した。
提供:建通新聞社