国土交通省は7月4日、社会資本整備審議会の分野横断的な技術活用に関するワーキンググループを開き、新技術の社会実装に向けた課題と解決策を議論した。主な論点のうち、設計から施工段階までの一連のプロセスでの3次元データ利用では、須ア純一京都大学大学院教授にヒアリング。須崎氏はBIM/CIMモデルに求められる役割が設計、施工の各段階で異なると指摘し、現場の作業方法を尊重したデータ作成、編集が必要になるとした。
直轄工事では2023年度からBIM/CIMの原則適用を開始している。ただ、設計段階で作成したモデルが現場条件と異なることが多く、施工段階では別途モデルの作成や修正が必要となっている。
須崎氏は、設計段階のBIM/CIモデルは積算根拠や設計思想を示す役割を負っていることを指摘。用地交渉や起工測量の結果を受けて地形の修正が必要になるなど、設計段階では未知の条件が必然的に発生するとした。こうしたギャップを現場で解消するため、施工会社による修正が必要になることを説明した。
この他、モデリングソフト間の互換性がないことや、モデル作成の人材が少なくコストがかかることなども課題に挙げた。
解決策としては、設計を担う建設コンサルタント企業と施工会社で、担うべき役割の見直しを提案。BIM/CIMモデルの再編集作業の歩掛かりを確認し、施工会社がモデルを編集、作成する必要があることを明確化する必要があるとした。コスト低減に向けた工夫やAIの活用、現場の作業方法に合致したデータ作成・活用も取り組み事項とした。
ヒアリングを踏まえ、ワーキングの座長を務める小澤一雅政策研究大学院大学教授は業務のプロセスそのものを見直す必要性を強調。「技術を生かしやすい体制、仕組みを考える必要がある」と述べた。
提供:建通新聞社