国土交通省は、発注者から支払われた労務費相当額が現場の技能者の賃金としてどのように支払われているか、直轄工事を対象に試行的に確認する。改正建設業法が施行されると、「労務費の基準」を著しく下回る労務費での見積もり・見積もり依頼が禁止される。公共・民間を問わず、技能者への賃金の支払い状況を確認する仕組みが必要になるため、まずは2024年度に直轄工事で確認方法を検証する。
入札公告の際に特記仕様書で試行調査の対象工事であることを明示する。受注者に対しても調査対象であることを明示した上で、下請け契約を締結してもらう。2次下請け以下に対しても同様に調査への協力を依頼する。
賃金支払い状況は建設業許可部局(各地方整備局の建政部など)が確認する。元請け、下請けがそれぞれ、対象となる技能者の賃金データを建政部に直接提出することを想定。2次下請けが1次下請けに、1次下請けが元請けに技能者の賃金を開示する形式とはしない。
提出するのは賃金データの他、対象工事への従事期間が分かる書類などを考えている。その結果を踏まえ、工事の積算で想定される賃金と、実際に支払われている賃金にどれほどの差があるかを確認する。
試行を通じ、確認書類の提出について適切な方法、時期などを調べる。提出された賃金データと経験年数、資格などの技能者情報を照合し、技能・経験に応じた賃金の支払い状況を確認する。結果の公表の在り方も検討する。検証結果を踏まえ、取り組みを段階的に拡大する方向だ。
建設業法の改正に先立ち、中央建設業審議会の基本問題小委員会は賃金支払い実態の可視化に向けた方策を検討するよう求めていた。今回の試行は、こうした問題意識を踏まえたもの。対応する事業者の事務負担を抑えながら、賃金支払いの状況を把握できる仕組みの検討に生かす。
改正建設業法の施行後は、公共・民間を問わず全ての工事で著しく低い労務費による見積もり、見積もり依頼が禁止される。労務費が適正か否かを判断する際は、中建審が作成・勧告する労務費の基準に基づく標準労務費がベースとなる。不当廉売の疑いがあれば、行政による取り締まりの対象となる。
提供:建通新聞社