国土交通省は、6月19日に開いた有識者会議に都市鉄道整備の促進策に関するまとめ案を提示し、大筋で了承を得た。整備費の負担を鉄道利用者に求める制度を柔軟化し、輸送力増強や大規模な駅改良など対象事業を拡大する。事業規模に関する制限をなくし、鉄道事業者の積極的な設備投資を引き出す。
制度見直しを提起した背景にあるのは、鉄道事業者の投資余力の減少だ。大手民間鉄道事業者16社の輸送人員は、コロナ禍の落ち込みから回復傾向にはあるものの、人口減少もあって大幅な拡大は見込みにくい。16社の設備投資額も19年の4928億円をピークに、22年は3142億円にまで落ち込んだ。
まとめ案では、都市鉄道を社会経済上の重要基盤と位置付け、輸送の脱炭素化の観点からも重要だとした。引き続き設備投資を促すため、鉄道整備による受益者を改めて整理し、費用負担を求める範囲を見直すことにした。
鉄道利用者の運賃に加算して負担を求める現行制度としては、対象事業の供用開始前から範囲を限定せずに加算が可能な特定都市鉄道整備積立金がある。東急東横線の複々線化工事など、総事業費が年間旅客運送収入を上回るような一部の大規模事業にしか適用できなかった。一方、事業規模に制約のない「新設建設に係る運賃制度」では、運賃加算は新線区間に限定した上で、供用開始後にのみ可能となっている。
これらの課題を踏まえ、より使い勝手のいい費用負担の在り方を検討。新線整備による他路線の混雑緩和などを含めて受益者の範囲を設定。供用開始前から利用者負担を求めることも認める。対象事業は輸送力増強や駅改良、新線整備など幅広く設定し、規模の制約もなくす。
透明性を確保するため、事業の効果や負担範囲、金額の丁寧な説明を鉄道事業者に求める。国が適正性、妥当性を確認することも盛った。
この他、みなとみらい線の事業費の一部を横浜市と開発事業者が負担した例を挙げ、事業ごとに地域や開発者など多様な主体による費用負担についても検討するとした。
提供:建通新聞社