国土交通省は、工事の受注者が資材価格の高騰を請負価格に円滑に転嫁できるようにするため、公正取引委員会と連携した対応を検討する。今国会で審議中の建設業法改正案では、資材価格が高騰した際に設計変更協議に誠実に応じる努力義務を発注者に課す。適正に転嫁されず、独占禁止法違反の恐れがある場合に、建設Gメンが把握した情報を公取委と共有して対処できる体制を考える。
建設業法改正案では、主要な資材の供給量の急激な減少や、資材価格の高騰など、工期・請負価格に影響を及ぼす事象について、契約締結までに発注者に通知することを義務化。合わせて、請負代金の変更方法を契約書の記載事項として明確に位置付ける。実際に資材価格が高騰した際、受注者がこの変更方法に基づく契約変更協議を申し出た時は、発注者に誠実に協議に応じる努力義務を課す。
これらの規定は、資材価格の高騰により、労務費にしわ寄せがいくような事態を防止するためのもの。ウッドショックをはじめ、近年の価格高騰の際は、特に材料と施工の一体で工事を請け負う専門工事業を中心に、労務費が抑えられ、結果として賃上げなど人手確保の原資を得られない事態を招いたという。
しわ寄せ防止の実効性を確保するため、「誠実な協議」がなされない場合、国交省は建設業法違反の相談窓口「駆け込みホットライン」を改めて周知。実地調査や改善指導を担う体制を強化するため、2024年度から法改正に先立って建設Gメンの体制も大幅に拡充した。
発注者が協議に応じなかったため工事費が抑えられ、原価割れとなったケースでは、まずは建設業法違反として勧告。さらに、発注者が優越的な地位を濫用し、受注者に不当な不利益を与えた場合、独占禁止法に触れ、課徴金などを科されることもあり得る。
建設Gメンによる実地調査の結果を公正取引委員会に共有するなど、建設業法・独禁法で円滑に対処できる体制の構築に取り組む。公取委が持つノウハウを取り入れ、建設業法の適格な運用に生かすことも検討する。
提供:建通新聞社