斉藤鉄夫国土交通相は5月22日の衆院国交委員会で、請負代金額の変更に向けた受発注者間の協議を円滑化するため、公共工事標準請負契約約款について「見直す必要がある」と答弁した。特に自治体工事を念頭に、設計図書の不備や物価変動に伴う価格、工期見直しの適正化を求める立憲民主党の馬淵澄夫議員の質問に答えた。
公共工事標準請負契約約款では、施工条件が異なったり、内訳書に記載のない項目が生じた場合などの工期・請負代金額の変更について、受発注者の協議で定めることと規定。ただし、協議が折り合わない場合は一定期間後に発注者が工期・請負代金額を定め、受注者に通知することとしている。受注者が不服な場合は、紛争処理のプロセスに進む必要がある。
こうした規定について馬淵議員は、受注者側が弱い立場に置かれていることを強調。「指名も受けられなくなるような状況を危ぐしてしまう」と述べ、特に中小建設業者側から発注者に異議を申し立てることの困難さを指摘した。適正な請負代金を確保できなければ、下請けに対して必要な労務費を支払うこともできないとし、公共工事標準請負契約約款の見直しを求めた。
斉藤国交相は、受発注者間の片務性から、紛争処理のプロセスには困難さがあるとの認識を示した。その上で、人手不足の深刻化を背景として近年、受発注者間でパートナーシップを構築する機運が高まっているとし、約款の中の代金変更などに関する条項について「見直しが必要ではないか」と述べた。
国交委では、発注者側の人手不足や歩切りなど、自治体工事が抱える課題についても意見が交わされた。自治体の土木部門の職員数がピーク時から約3割減少したことを背景に、設計図書と現場の不一致が生じていると馬淵議員が発言。設計図書の金額の一部を根拠なく控除する歩切りについて「依然としてある」との認識を示し、対応を求めた。
塩見英之不動産・建設経済局長は、毎年の調査で歩切り根絶を確認していることを説明。自治体の首長の交代などのタイミングを念頭に「元の形に戻るという懸念もある」とし、引き続き実態の把握に取り組むと答弁した。また、議員に寄せられた情報を含め、ヒアリングする考えを述べた。
提供:建通新聞社