国土交通省は5月10日、能登半島地震を踏まえた上下水道の対策に関する有識者会議に、これまでの議論の中間まとめを提示した。被災市町の復興の方向性、全国での今後の地震対策、上下水道一体での災害対応を柱とし、大筋で了承を得た。これに加え、委員からは、災害対応にあたる建設業の技術者確保、人材育成の視点を持つべきとの指摘があった。
能登半島地震では最大約14万戸で断水が発生するなど、上下水道両方に大規模な被害が生じた。こうした被害を踏まえ、中間まとめには、災害に強く、持続可能な上下水道システムを構築するための方策を盛り込んだ。
被災市町の復興では、地域住民の意向に配慮した上で、施設の適正規模化や統廃合、下水道から浄化槽への転換も視野に入れる。新技術の積極導入、施設の遠隔監視などDXにより事業を効率化。広域連携、官民連携を必要に応じて取り入れる。
今後の地震対策については、人口減少に対応するため、被災地に限らず施設規模の適正化をはじめとした上下水道事業の効率化が必要になるとした。その上で、浄水場や下水処理場など「急所」の耐震化、多重化を計画的に進める。避難所などの重要施設に接続する上下水道管路の一体的な強化にも取り組む。
上下水道一体での災害対応に向け、国が全体調整を行い、自治体からの要請を待つことなく復旧支援できる体制を構築する。処理場などの防災拠点化の必要性も挙げた。
10日の会合では、能登半島地震の災害復旧に携わっている全国管工事業協同組合連合会へのヒアリングも実施。被害を踏まえた課題・教訓として▽宿泊施設が見つからない▽採石や砂、土捨て場が遠方にあり、非効率▽指揮・指示する水道事業者の職員の不足▽出動時間が長期にわたるため、前払金が必要▽耐震性の高い管路整備が急務―といった意見が挙がった。
有識者委員会で、5月中に正式な中間まとめと被災市町への助言を作成する。その上で、8月ごろをめどに被害の総括と所見、地震対策の在り方についてまとめる。
提供:建通新聞社