全国建設業協会(全建、奥村太加典会長)は、労務費を適切に転嫁するための自主行動計画を策定した。内閣官房と公正取引委員会が昨年11月にまとめた指針を踏まえ、労務費の上昇分を元請けの会員企業が注文者として適切に支払うための行動に加え、受注者としても適切に労務費を受け取れるよう、発注者との価格交渉に使用する根拠資料や交渉のタイミングなどを明示している。
内閣官房と公取委がまとめた「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針」を踏まえ、建設業従事者の処遇改善に向けて各都道府県協会の会員企業が取り組むべき事項を行動計画としてまとめた。会員企業には、注文者・受注者双方の立場があるため、それぞれの立場で取り組むべき行動を整理している。
注文者の立場としては、下請けの労務費の上昇分を受け入れることを、本社の経営トップの関与で決定する重要性を強調。労務費の上昇分を受け入れることを書面で社内外に示す必要性も指摘した。
労務費の上昇分を取引価格に反映するため、定期的に下請けとの協議の場を設けることも推奨した。
労務費上昇の理由や根拠資料の提出を下請けに求める場合は、公共工事設計労務単価、都道府県別の最低賃金、春季労使交渉の妥結額など、合理的な根拠があるものを尊重する。下請けから取引価格の引き上げを求められた場合には協議に応じ、労務費の転嫁を求められたことを理由として、取引停止などの不利益な取り扱いをしないよう求めた。
会員企業が受注者として発注者と価格交渉する際にも、労務単価や最低賃金などを根拠資料として活用。価格転嫁の交渉は、労務単価の改訂など、受注者側の交渉力が優位なタイミングをとらえるべきとした。
請負契約にスライド条項を定めているケースでは、スライド条項を積極的に活用して価格を交渉する。受発注者間の認識のずれを解消するため、注文者・発注者双方の立場で取り組む行動として、、価格交渉の記録を作成し、双方で保管する必要性も示した。
会員企業が行動計画を順守できるよう、全建は「労働関係法令相談室」で相談を受け付ける。各都道府県協会は、会員企業に対し、取引先との価格交渉・価格転嫁に応じることを宣言する「パートナーシップ構築宣言」への登録を促す。
提供:建通新聞社