国土交通省は、現金化までの期間が60日を超える手形は建設業法に規定する「割引困難な手形」に該当するとし、11月1日以降、特定建設業者が下請け代金の支払いで交付することを禁止する。4月30日付で建設業団体に通知した。民間発注者団体にも参考として通知し、元請けが支払い条件を改善するための環境整備に協力を求めた。
公正取引委員会と中小企業庁も同日、下請法に基づき指導対象となる「割引困難な手形」の期間を120日超から60日超に短縮することを関係事業者団体に通知。合わせて、下請法の対象外であっても、建設工事など発注から納品までの期間が長期にわたる取引については、前払いや期中払いの比率を引き上げるよう要請した。
国交省はこれをを受け、建設業法に基づく元下関係の取引でも、同様の運用とすることにした。支払い条件の見直しにより、建設事業者の資金繰りを改善し、物価上昇への対応、賃上げ原資の確保につなげる狙いがある。
新たな運用では、元請けが特定建設業の許可業者で、下請けが資本金4000万円未満の一般建設業の許可業者の場合に割引困難な手形の交付を禁止する。今回の運用変更を踏まえ、「建設業法令遵守ガイドライン」も10月に改正する予定だ。
下請け代金の支払いに充てる手形の期間を短縮するためには、元請けの資金余力が必要になる。このため、民間発注者34団体に手形期間短縮に協力するよう要請。元請けへの支払いに当たり、可能な限り現金払いを選ぶとともに、手形であっても支払い期間を短縮し、前払いや期中払いの比率を引き上げるなど、サプライチェーン全体での取り組みを促した。
政府が紙の手形を2026年までに廃止する方針を表明していることもあり、手形利用者は減少傾向にある。23年度の下請取引等実態調査によると、一部でも請負代金の支払いに手形を用いているのは建設業者全体の2割以下まで減っている。
手形を利用している建設業者のうち、60日以内の手形を設定しているのは10・4%。多くの建設業者は手形期間を短縮する意向を示しており、国交省は引き続き支払い条件の改善を粘り強く働き掛ける。
提供:建通新聞社