不動産経済研究所によると、2023年度に首都圏で発売された新築分譲マンションは2万6798戸で、前年同月と比べ6・4%減少した。2年連続で3万戸を下回り、1975年度(2万5723戸)以来の低水準となった。工事費や用地費の上昇、販売の長期化を受け、デベロッパーが供給を絞り込んだことが主な要因と見られる。ただ、都心では高額物件が堅調で高値傾向は続いており、同社は24年度も「値下げ要素は少なく、供給戸数は増加に転じるのではないか」としている。
23年度の発売戸数を地域別に見ると、東京23区は1万1100戸(前年同月比3・8%増)、都下は2294戸(同1・8%増)。都内では再開発物件、中央線沿線の大型物件が供給を押し上げた。
一方、神奈川県は6370戸(同5・6%減)、千葉県は4107戸(同2・3%減)、埼玉県は2927戸(同38・2%減)。都心郊外エリアでは供給を減らした。
1戸当たりの平均価格は7566万円(同9・5%増)、1平方b当たりの単価は115・1万円(同10・8%増)。平均価格、単価いずれも3年連続で最高値を更新した。都心で大規模・高額物件の供給が増え、工事費や用地費が高騰したことが高値傾向の背景にある。東京23区の平均価格は1億0464万円(同5・7%上昇)、単価は161・1万円(同7・4%上昇)。単価は91年度(151・0万円)を上回る最高値を更新した。
約50年ぶりの記録的な低水準となった供給戸数。その主な要因には、工事費上昇の影響で都心はもちろん、郊外でも利便性の良いエリアに絞り込んで供給されていることが挙げられる。コスト増に伴い、売り出し価格も上昇しており、「エンドユーザーの動きは鈍くなっている」(不動産経済研究所)。
23年度の初月契約率は69・9%だった。好不調の目安とされる70%近くに落ち着いたが、売れ行きが落ちると、販売も長期化、1期当たりの供給戸数も減少する。
施工する建設業界の人手不足も影響は大きい。すでに工期遅延により、販売時期を後ろ倒しするといった物件もあり、時間外労働の罰則付き上限規制の始まった4月以降、こうした影響がさらに顕在化する懸念もある。
提供:建通新聞社