国土交通省は、建設現場のデータをリアルタイムで収集・活用することで、施工の段取りの最適化や、工程上のボトルネックの把握といった「現場マネジメント」に生かすための実施要領案をまとめた。今後に実施を検討しているモデル工事の試行に使用する。ICT施工の新たな段階「ステージ2」の取り組みとなる。
実施要領案は、ICT活用が先行している土工事への適用を基本とする。工事全体の状況をICT機器やウェブアプリケーションで可視化することで、受注者側の技術者による施工管理や、発注者側の監督・検査の効率化、生産性向上につなげる。測量や施工などの工種単位でのICT活用による効率化から一歩前進し、工程全体を改善する。2023年度に全国のICT活用工事の現場を調査し、水平展開が見込まれる有望な取り組みを要領にまとめた。
主な取り組みのうち、施工の段取りの最適化では、ダンプトラックの到着時間を位置情報やカメラ検知で把握することで、積み込み作業の準備タイミングを調整し、待機時間を削減する手法を例示した。
ボトルネックの把握・改善では、土工作業における「掘削・積み込み・運搬・敷均し」のような一連の工程について、段階ごとに要する稼働時間や稼働率、待機時間を把握。掘削・積み込みが早く進んでも運搬に時間を取られ、結果として工程全体の効率が落ちるような状態を見抜き、分析・改善を加えるイメージだ。
進ちょく状況の把握による予算・実績管理も取り組み事項に挙げた。作業ごとの進ちょくを示す日当たり施工量を把握し、計画との差をリアルタイムで監視することで工程遅延を防ぐ。月間・週間単位での把握よりも機敏に資機材の手配などを再調整できるようになる。
掘削・盛土工程の進ちょく管理では、複数現場をまたぐ土配管理を最適化する。
この他、ダンプトラックのリアルタイムな運行状況把握により、法令順守の徹底や、騒音・振動に関する苦情への対応、ドライバーの注意喚起などを実施する取り組みも要領案に盛った。
工事現場内で建機やダンプトラック、作業員の位置情報のリアルタイムでの把握は、接近時の警告、ヒヤリハット情報の収集に生かす。
データ活用による現場マネジメントに取り組む受注者は、要領案に基づき受発注者間で協議する。使用する機器やウェブアプリは実施計画書に記載する。国交省は取り組みを希望する受注者向けに、活用が可能な機器・アプリをホームページの技術調査関係資料として参考例示している。
今回は土工が中心だが、今後は他工種についても優れた取り組みがあれば収集し、要領案を随時更新する。
提供:建通新聞社