建設経済研究所と全国建設労働組合総連合(全建総連)は、2023年10月のインボイス制度開始を受けて一人親方に行ったアンケート結果をまとめた。インボイス登録番号を取得し、消費税の納税事業者となった回答者のうち、元請けや上位下請けの支払い単価に消費税分を上乗せされた一人親方は全体の34・8%にとどまり、単価据え置きが全体の65・2%を占めたことが分かった。
一人親方を対象として23年11月〜12月にアンケートを行い、2708人から回答を得た。回答者の年齢は50代以上が全体の75・4%を占めている。主な就労先は町場や工務店などの現場で、この他にゼネコンの野丁場や、ハウスメーカーの現場で一人親方も回答した。
インボイス制度の導入後、登録番号を取得したのは52・1%。今後取得する予定と合計しても6割に届かなかった。
番号を取得した企業のうち、上位の取引先と話し合い、単価に消費税分を上乗せしたのは14・2%。話し合いはなかったものの上乗せできた回答者も20・7%あり、合計すると34・9%で単価を上乗せできたことになる。
一方、話し合いをしたが単価は据え置かれたという回答者も12・3%あった。話し合いをせず、単価が変わらなかった回答者と合わせると65・2%で単価が据え置かれ、消費税分が一人親方の負担となっていた。
登録番号を取得しなかった一人親方に仕事を請け負わせる元請けや上位下請けは、その分の消費税負担が増す。こうした一人親方の取引単価について聞くと、「消費税分が値引きになった」との回答が36・7%あった。
制度の導入をきっかけとして、「収入が減るなら仕事をやめる」と9・1%が回答した。「手続きが面倒ならやめる」と合わせ、13・2%がインボイス制度の導入をきっかけに廃業を考えているという結果だ。22年に行った調査よりも、やめるとの回答が5ポイント近く上昇した。
番号を取得して課税事業者となった一人親方は、「2割特例」などの税負担軽減措置を利用できる。しかし、この制度について「知らない」との回答が42・9%を占めていた。インボイスをきっかけに廃業する一人親方が増えれば、足元の人手不足感は一層、強まりそうだ。
提供:建通新聞社