総務省は、地方自治体の調達関連手続きを共通化・デジタル化するため、自治体の契約部局担当者らを交えた実務検討会を立ち上げた。入札参加資格申請のオンライン化とともに審査項目の共通化を進め、受発注者双方の業務量の削減につなげるのが狙いだ。一方、経済団体からは、資格審査時の自治体独自の加点制度の維持を求める声や、企業間のデジタル対応の差などを懸念する声も挙がっている。
入札参加資格申請の項目を、@全団体共通の項目(事業者名称、住所など)A自治体が任意に設定する項目(工事経歴、ISO認証取得など)B独自項目(地域貢献活動の状況など)―の三つに区分。一度に複数団体に申請できる「ワンスオンリー化」を進め、申請時期や受付方法などの共通化も促す。
審査以降の手続きとなる入札公告、入札、契約、完了届、請求などは、広域的または全国的なシステム整備を前提として共通化を検討する。
3月28日に開かれた初会合では、検討会のメンバーに経済団体がメリットなどを紹介し、共通化の推進を要望した。一方、中小企業を会員とする全国商工会連合会や全国中小企業団体中央会は、電子化に対応できない小規模企業が入札から排除されかねない、といった危機感を示した。
検討会に参加しているのは、愛知県、滋賀県、千葉県、東京都町田市、福岡県粕谷町、関西広域連合、山梨県市町村総合事務組合。いずれも広域の調達システム整備の実績がある自治体となる。この他、オブザーバーとして全国知事会、全国市長会、全国町村会、内閣府、デジタル庁が参加している。
新経済連盟は、数十兆円規模の公共調達でDX化を進めることが、社会全体のDX化につながると強調。人口減少や財政の健全化に加え、場所を選ばない働き方を推進する観点からも全国共通化が望ましいとした。
この他、日本経済団体連合会や日本商工会議所も、手続きの共通化やペーパーレス化、電子契約、押印廃止などを求めめている。
これに対し、全国商工会連合会は、電子化・オンライン化に対応できない小規模事業者が入札から排除される可能性に触れ、小規模事業者を保護するための加点制度の維持や、事業者にとって分かりやすい制度設計を求めた。
全国中小企業団体中央会は、共通化とデジタル化のメリットに理解を示しつつも、ブローカー業者の台頭やアウトサイダーの増加、電子化に対応できる人材の不足などにより、中小企業の受注が難しくなるおそれがあると指摘した。
検討会では、まず「物品・役務等」を対象として、入札参加資格審査申請の項目や申請方法、調達関連システム整備の在り方を検討。今後、全ての自治体に意見を聞き、方向性を定める。
提供:建通新聞社