建設コンサルタンツ協会(建コン協)と日本橋梁建設協会(橋建協)は、鋼橋上部工の設計データを工場製作で直接活用するため、設計データを標準フォーマットに自動変換できる「中間ファイル作成システム」を開発した。これにより、設計データをいったん2次元図面で出力し、工場製作のための自動原寸システムに手入力していた過程を省略できるようになる。国土交通省は2件の直轄工事で試行し、従来作業と比較し改善効果を確かめるとしている。
中間ファイル作成システムは、自動設計システムで作成した設計データを自動原寸システムに自動入力できる標準フォーマットに変換するもの。自動設計システムで反映できない設計データについては、引き続き手動での微修正が必要になるものの、主桁など主な構造物の設計データの自動原寸システムへの手入力が不要になる。自動入力となるため、省人化に加え、入力ミスによる作業の手戻り防止といった効果も期待される。
鋼橋の設計データは、設計者が自動設計システムで作成。システムで反映できない部分を手作業で入力した上で、2次元図面で出力し発注者に納品。その後、施工者が、その2次元図面を基に自動原寸システムに必要な情報を手入力し、工事製作データを完成させてきた。
試行工事は、中国地方整備局浜田河川国道事務所の「令和5年度福光・浅利道路2号鋼橋上部工事」(設計者・片平新日本技研、施工者・IHIインフラシステム)と、四国地方整備局徳島河川国道事務所の「令和5―7年度横断道津田高架橋上部P7―P12工事」(設計者・パシフィックコンサルタンツ、施工者・川田工業)の2件で実施する。
試行ではまず、発注者が自動設計システムで設計されたデータを中間ファイル(標準フォーマット)に変換。自動設計システムで反映していない情報と併せて、施工者に提供する。施工者は、中間ファイルを活用して、自動原寸システムで工場製作データを作成。微修正箇所を反映させ、工場製作データを完成させる。従来の原寸作業も実施し、中間ファイルを活用した試行ケースとの作業日数の変化など改善効果を比較する。
建設工事の中で橋梁分野は、比較的にデータ連携が進んでいる。これまでも@―Bridge活用工事などで、BIM/CIMによる3次元モデルのデータ活用に取り組んできた。一方で、設計段階で作成した3次元モデルを、施工段階でそのまま利用できない現状もある。3次元モデルなどのデータ引き継ぎでは、いったんPDFや文書ファイルなどに変換する必要があり、後工程で活用するためには、データを入力し直すといった手間がかかっているという。
国交省では、BIM/CIMによる生産性向上という目的達成に向けて、3次元モデルデータのスムーズな引き継ぎと活用が必須とし、前工程のデータを後工程に引き継ぎ、共有する「データーシェアリング(DS)」に取り組む方針を打ち出していた。これに呼応し、建コン協と橋建協が昨春、ベンダーととともにワーキンググループを設置。中間ファイル作成システムの開発を進めてきた。
提供:建通新聞社